WESTちゃん短編集 その2

「胃袋掴まれて」(黄×緑) ページ33

(黄)









『ただいま〜』


「……おかえり」


『何そんなぷんぷんしてんの？』


「淳太くん…帰ってくるん遅い」


『ごめんごめん、残業してたんよ』


「…わかってる、でも、ご飯冷めちゃったもん……」


『ごめんな？食べんと待っててくれたん？』


「……だって、淳太くんのお家やし…」


なんてうるうるな目で見上げてくるともの頭を撫でる。


『とものお家でもあるんやで？』


「ご飯作る代わりに住ませてもらってっ、…


『それは言うたらあかん。俺がともの美味しいご飯に胃袋掴まれてここにおって言うたんやもん』


「…もう、淳太くん優しすぎる」


なんて言いながらぎゅっと抱きついてくるのが可愛すぎて。


『…ふふ、ともがたまたま俺の家の前で倒れててよかったわ』


「僕も、淳太くんのとこいれて嬉しい…！」


猫のひげみたいなシワを作りながらにこにこと笑う。


『お腹空いたから、早くご飯食べたいな』


「うん！今日はね淳太くんが好きなブイヤベース作ってん！」


『え、ありがとう〜！オカン以外でブイヤベース作れる人に初めて出会ったわ』


「ふふ、淳太くんはいつも美味しい！って言いながらいっぱい食べてくれるから張り切って作っちゃう」


『だってほんまに美味しいもん』


そう言えばまたさっきみたいににこにこと可愛らしく笑う。


「手洗って、部屋着に着替えてくるな？」


『はーい！その間に温めておくね』


こんな純粋でいい子なともやけど、親から捨てられてしまった高校生の男の子。


毒親に育てられて、幼い頃から家事をさせられていたから家事は全般得意。


褒められることもなく、完璧にしないと怒られたり体罰を与えられていたらしい。


………酷い親。


これからどうなるか分からんけど、せめてここにいる間だけは安心してのびのびと過ごして欲しい。


……まあ、ずっとここにいてくれたら俺としては嬉しいんやけど。


「淳太くんまだ着替えてるんー？もう用意できたよ？」


リビングからともの声が聞こえる。


ブイヤベースのいい香りも漂ってきた。


ちょっと思い返してたら、時間が経ってしまってたみたい。


『すぐ行くー！』


そう返事をして足早にともの待つリビングに向かった。











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