蝉の聲に溺れる【HQ】

わるもの。８ ページ8

A視点

朝練が終わり、ミーティングが始まる。

「…えー、そして。今週の日曜日に他校との練習試合が入った」


体育館がざわざわとする。

すると、はじめが言った。

「相手は、どこですか？」


「相手は、烏野高等学校だ。」

烏野…

そして、三年も興奮を隠しきれないようで。


「うわ…トビオ居るじゃん…」

一人、私と同じような意見のやつがいた気もする。

烏野…ねぇ。


…たまには、サボろうかな？

なんて思っていた、はずだったのに。



放課後のことだった。

「岩ちゃん！…っあ、ごめん少し低い！」

及川の異変に気付いたのは、休憩時間前のことだった。


なに、あいつ…足少しひきずってんの？

怪我したならちゃんと言えよ、主将のくせに。

休憩時間になると、私はすぐに本人を呼んだ。


緑川が孤立しているのを横目にみながら。

「徹、ちょっといい？」

「ん？なーに」


ベンチに座らせ、彼をみる。

「足、見せてもらうよ」

「…もしかして、気付いた」


「気づかないバカがどこに居んのさー」

思い当たるところを少しだけ押すと、予想以上に彼は居たい顔をした。

「…捻挫かな。病院行った方がいいよ！」


「そうだねー…早く治した方がいいしね」

こういうところは素直なんだから。

「全く…コーチ呼んでくるから、ドリンク貰ってね」

そう言って、私は体育館を去った。

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