蝉の聲に溺れる【HQ】 (ページ41)

今日:2 hit、昨日:16 hit、合計:10,853 hit

わるもの。41 ページ41

超強引に連れてこられたのは、別の体育館だった。

「木兎腕掴むな！」

「まあまあ」

「黒尾、おっまえも肩ずっと触んないで変態」

「だってお前、離したら逃げるだろーが」

え、バレてた？やっだなぁ～！

「失礼しま～す」

そこには、自主練習中の青城三年が居た。あと緑川もえと赤木。

急に態度を変えた私に、吹き出す月島と黒尾。

「やばっ…腹いてぇ」

「Aさん…っ最高ですね！」

覚えてろよ…こいつら。

「どうも～、どうかしましたか？」

ようやく木兎は私を離した。

そして、目の前に満面の笑みの及川が現れる。

「いやぁ、どうも日向さんのこの傷が気になりましてねぇ。

聞いたところによると、あなた方に殴られたとの事だそうで」

ねちょねちょ憎たらしい言い方、黒尾は私の痣を指さした。

「こっちも、好きで叩いたわけじゃないんですよ」

「何があろうと、自分のチームのマネージャーに暴力振っていいと思ってるようですね？
あなたがたチーム全体の絆はそこまでだったってことで」

その言葉で、及川の表情は怒りに変わる。

「まあ、そいつは裏切り者だから？裏切り者がどうなろうと、俺らは知らないし」

「うっわぁ、今の聞いた？赤葦く～ん」

「ちゃんと耳に入りましたよ」

「主将としての自覚、なさすぎデショ」

私は青ざめた顔をしながら後ろを向き、途端に笑いを堪える。

「一年に言われるって、そうとうやべーな！」

「なんの罪もない人を殴るなんて、ねぇ…」