蝉の聲に溺れる【HQ】 (ページ34)

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わるもの。34 ページ34

3セットぶっ続けでやっている。

「ライトー！」

…これは。

「月島！」

私は手で呼び寄せてから、あいつのブロックをした。

ジャンプしてから、私の予想は的中した。

「ワンチ！」

「オーライ！」

木兎がレシーブをしたところで、ツーアタックを咬ました。

一点、入った。

「あの…日向さん」

「下の名前で呼んで」

「Aさん、今のって…フェイントを読んでましたか」

よくおわかりで。

「そう。来ると思ったから、できなくしたの」

ちらりと相手のコートを見ると、私を睨むあいつがいて。

ざまあみろ。バレーじゃ一生私に勝てないくせに。

…でも、あいつの意地の悪さは国宝級だと思う。

「…そろそろ、切り上げましょ。もうすぐ風呂の時間だし…お怒りの方もいますし、ね」

ジャージと長ズボンを片手に、体育館をでようとした矢先。

緑川梓は、大声で叫んだ。

「あいつは、チームメイトを裏切ったんだ！」

私を、指差しながら。

途端に、震えが始まった。

「仲間を笑って、自分の思うようにプレーして、迷惑の塊が！」

思わず左手を抑える。

キャンキャン煩いなぁ。

「じゃあ…コネで試合でて準決勝敗退に導いたのは誰？…お先、失礼」

あぁ、きっとあいつらも騙されるんだ。

私は、いつも一人だった。

左手の震えが止まず、強く掴みながら歩いていると、

突然誰かとぶつかった。

「…うわ…え、ちょっ何してんの」

及川は私の両手を引き離した。

「…なんか、あったの？」

私は咄嗟に、手を隠した…しかし、こいつはまた掴んできて。

「な、なんにもないよ！」

笑顔で誤魔化しても聞かなかった。

「じゃあ…なんで、こんなに震えてるの？
しかも、強く握りすぎて血がでてるよ…ったく」

どこからか、こいつは絆創膏をとりだして。

いつも私に強く当たるくせに。

貼り終えると、左手を両手で包みこんだ。

「…はい」

表向きの性格上、すぐ引き離すことはできなくて。

「…ありがとう、徹」

私はニコニコ笑っていた。

お前がそんなこと言うのかよ。

態度変わりすぎ、わろた。

吹き出すのを堪えていた。