蝉の聲に溺れる【HQ】 (ページ22)

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わるもの。22 ページ22

A視点

誰よりも早く体育館へ行き、準備を済ませる。

すると、ぞくぞく部員たちが入ってきた。

「よーし、今日もや…なに？」

花巻と松川。二人は、私を睨みつける。

「こっち見んなよ…悪女が」

別にあんたら見てたわけじゃないんだけど。

心の中で、鼻で笑いながら謝る。

「ごめんね…私、ドリンク作ってくるね」

彼らは、きっと正当だ。正しい判断をしている。

私は悪女だ、自分でも自覚するほど、取り返しのつかないレベルの、重度の悪女である。

しかし…やはり間違っている。

私が本当にやったのなら正当だ、しかし私はやってない無実なのだから、あいつらは痛い目にあうだろう。

給水所に向かうと、なにやら話し声が聞こえた。

緑川と赤木だ、来るのが遅いと思ったら、ここにいたのか。

「もえ…ごめんね、ほんとに」

「ううん…でも、やっぱりあいつだったんだね…どん底に落ちればいいのに。」

…なかなか面白いじゃない。

私はスマホを手に取り、録画をする。

…うん、あいつらには見えてない。

すると、なぎさはなにか思いついたのか、笑った。

「もえ…私、いいこと思いついちゃった」

それを聞いた私は、爆笑しそうになった。

すぐに部室の椅子に座り、大声で笑う。

「なにあいつ！バッカじゃないの！！笑」

そんなの、バカにしか通じないのに。

緑川も真面目にやっちゃって。

…てか、ウチの部みんなバカだったわ。

あぁーあ、じゃあ騙されちゃうね。

私に…。

こんな話、誰かが聞いてるなんて知らなくて。