蝉の聲に溺れる【HQ】

わるもの。18 ページ18

及川視点


Aが休んで二日が経った。

朝練の片付けをしていると、俺の前に二人のマネが現れた。

「徹…ちょっといい？」


真剣な顔のなぎさと、不安そうな緑川。

「…どうしたの？」

「Aが、ロッカーの下敷きになってた件だけど…私、勘違いしてたみたい」


…勘違い？何を言ってるんだ。

「あの時、Aが部室を争うとしてたんだって。だからもえ、止めに入ったの。

そしたら…Aが、…もえに、要らないあんたが
容疑者になるの、私はそれを見てるだけ。あー面白い…って


暴れだしたんだって。」

「…なんだよ、それ」

なにそれ。そんなわけないだろ。


確かに、俺らはAに絶対の信頼がある。

…そんなの。

「そんなの、お前らの作り話だろ？こんな暇があんなら仕事しろよ」


そう言って岩ちゃんの方に行く。

だいたい、あの二人がAを凄く嫌ってるのは知ってるし。

あいつはこんなことする奴じゃない。三年間積み上げたものは、脆くない。


それに…岩ちゃんには悪いけど、俺はAが好きだ。

誰にも平等な態度、人を寄せ付ける笑顔。

っていうかAは被害者だ。今日は朝からイライラする。

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