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そっとカーテンを開けると、まだ太陽は昇っていない。
薄っすら街頭の光が照らす時計の時刻は午前四時を回ったところだ。
僕の荷物が入った少し大きめの黒い鞄が、先輩の部屋の勉強机の上に置かれているのも視界に入る。
更に視線を移すと、部屋の真ん中で厚手の羽毛布団にくるまれた板垣先輩が寝息を立てていた。
そう、僕は結局、この人と自分の家にパンツを取りに行ったあの晩から、荷物をまとめてこの人の家に厄介になっている。
すでに今日で三回目の朝を迎えようとしているのだ。
「今日からここがお前ん家。もう何にも遠慮はいらねえから」
そう言われても、ここは僕の家じゃない。
まぁ、あのマンションも僕の家なのかどうか、定かではないのだが。
僕の居場所は、どこ？
「お前の居場所はここだ」
この先輩ならきっとそう言うだろう。
それが嬉しくないわけじゃない。
だけど、心の居心地の悪さは否めない。
『いや、別にいなくていい。いないほうが俺の仕事もはかどる』
父に言われたその言葉が、フラッシュバックする。
いなくてもいい。
僕が家に帰ってなくても、心配もしていない様子だった。
どうでもいい様子だった。
なんなら、いっそ迷惑そうだった。
そうなんだよ。
僕は、いなくてもいいんだ。
だからこそ―
振り返った先で、先輩が寝返りをうって、僕の方に気持ちよさそうな寝顔を向けていた。
「先輩…。最後に、あなたに会えて良かったです…。こんな僕に優しくしてくれて、本当に…」
まだ夜明け前の薄暗い街並みの中、僕は持ち出した自分の荷物が入った黒い鞄を、知らない住宅地のゴミ捨て場に放り投げ、そして、先輩の家を振り返ることもなく歩き出した。
十一月の朝は、東北に住んで頃を思い出すような、そんな底冷えする寒さだった。
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milkssss(プロフ) - めるてぃーさん» ありがとうございます！明日には完結できるように頑張ります！！ (2020年1月30日 19時) (
レス) id: a9a20d4e33 (このIDを非表示/違反報告)
めるてぃー - 更新がはやいので嬉しいです、頑張ってください！ (2020年1月30日 5時) (レス) id: 3d377f7936 (このIDを非表示/違反報告)
milkssss(プロフ) - みるくさん» コメントありがとうございます。そういっていただけて嬉しいです！ (2020年1月21日 18時) (レス) id: 81ca320fbb (このIDを非表示/違反報告)
みるく - すごく続きが気になります！ 更新頑張ってください！ (2020年1月20日 21時) (レス) id: 715edf2e0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年1月20日 19時
