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帰りのホームルームが終わり、ぞろぞろと生徒たちが教室を出ていく。
俺が廊下側の席の一番後ろに目をやると、あいつはまだ泣きそうな顔をして帰り支度を終え、ゆっくりと立ち上がって教室を出ていった。
俺の言った通りに校門前で待っているだろうか。
もし待っていなかったら、このスマホの写真を…。
「なぁ太智、仁人の奴、体育の授業の後から元気なかったよな…。大丈夫かな…あいつ…」
と、俺の前の席の奴が振り向きながら俺に心配そうな顔を向けてくる。
誰のせいであんな風になったと思っているのか。
それに、毎日毎日辛気臭い顔してるのはどっちだよ、とツッコミを入れたくなる。
それなのに他人の心配をするとか、俺はこいつのこういうところが好きじゃない。
そもそも―
「知らないよ。別に俺はどうでもいいし。じゃ帰るわ」
「あぁ、おう。じゃあな」
手を振る佐野を横目で見送り、俺も教室を足早に出ていった。
なんかちょっと気分を損ねてしまった。
なんで吉田は佐野なんかが好きなのだろうか。
あいつのどこが良いって言うのだ。
ああ、むかつく。
この写真、マジでばらまいてしまおうか。
いや、でもまだこいつは使える。
せっかくのあいつの弱みをみすみす使ってしまうのはもったいないか。
まぁ、それもこれも、あいつが校門前で待っているかどうかで決まるんだけど。
「あ…いるじゃん」
しかしながら彼は、そう、吉田学級委員は校門の前で顔を青くして大人しく立っていた。
俺の言った通りに。
「俺の言いなりじゃん。良いね」
「し、塩��君…」
彼にはきっと俺が悪魔のように見えていることだろう。
当の俺自身は神になった気分でいる。
そう思うと、案外神も悪魔も、紙一重の存在なのではないだろうか。
嵐なんかもそうかもしれない。
天がもたらす恵みの雨ととるか、甚大な被害をもたらす災害ととるか。
神の御業も悪魔の所業も、要は受け取り方次第でころころその実態を変えるということだ。
今俺は、そんな人知を超えた存在として、吉田仁人と言うこのクラスメートの前に立っているのだ。
そして、そんな彼は俺の意のまま。
何て心地のいい高揚感だろうか。
「じゃあ行こうぜ」
俺はそう言う。
こいつは、「どこへ？」と尋ねる。
どこへ行くのも、何をするのも、こいつはもう俺の手の中なのだ。
俺はそう思うだけで、少し満足げに笑うのだった。
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年1月11日 18時
