溺れる偽愛 (ページ50)

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『はい、ココア』

「ありがとう」

上裸でいることが寒かったのか、Tシャツとスウェットを身に纏っていた彼。

自分のコーヒーを持って私の隣に座った。

ココアを飲もうとすると、予想以上の熱さで思わず咄嗟に口を離す。

『んふ、猫舌なの？』

「あ…うん」

『可愛いね』

熱そうにしている私を横目で見ながら微笑んだ樹くん。

寝起きで無防備な表情でそんなこと言われたらキュンとしてしまって、ココア以上に私の頬が熱くなる。

『…覚えてる？昨日のこと』

「うん…」

『怖くなかった？』

「大丈夫。樹くん優しかったから」

『ならいいけど。俺も止まんなくって…痛くさせちゃったかもって』

もちろん初めてだから痛かったけど、そんなことどうでもよくなるくらい愛しくて。

嬉しかったんだ、樹くんと繋がれたことが。

「ほんとに大丈夫。ありがとね、心配してくれて」

『いや、当たり前だよ。初めてだったんだから。俺も久しぶりに緊張しちゃった』

“久しぶりに“

そのフレーズが少し引っかかって。

私と出会うまでにどれほどの女性としてきたのだろう。

そう思ったら…すごく複雑で。

苦しくなるような感覚になった。

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