溺れる偽愛 (ページ47)

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部屋の前に着いたのか、鞄の中を漁って鍵を取り出した彼はそのまま鍵を開けて

『ちょっと座ろっか』

「うん」

玄関で一度休憩するように私を座らせた樹くん。

私は座ってるけど、彼は目の前に立ったまま荷物を置いたりしていた。

パチンと玄関の電気が点かれれば、今まで暗かったせいか眩しくて目を瞑る。

光に慣れるまで目を閉じたりしていると、服が擦れる音がして少し目を開けた。

その視界に入ったのは、立ったままだった樹くんが私の前にしゃがんでいる姿だった。

『…いいの？』

「え…？」

『このまま部屋に入ったら、もう戻れないけど。それでもいいの？』

同じ目線で心配そうに呟く彼に、私の心臓は高鳴っていて。

『今だったら帰らすことできるよ。…どうする？』

「…」

そんなこと聞かれなくても、気持ちなんかとっくに決まっているのに

どこまで優しいんだろう…彼は。

「…いいよ」

『…』

「…樹くんが好きだから。これでいいの…」

『…っ』

涙目になりながらそう呟くと、樹くんは私の頬に優しく手を添えた。

そして、そのままゆっくり重なった唇。

初めてのキス。

それがこんなに嬉しいことだなんて知らなくて。

幸福感に包まれるように胸がいっぱいになる。

すぐに離されると彼の表情はとても妖艶で、私の理性を崩すようだった。

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