溺れる偽愛 (ページ46)

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『…』

無言の彼を感じて、無意識の発言といえどこんなこと言わなきゃ良かったなんて思ってしまう。

軽く当たる風が、そんな苦しい気持ちを溶かしてくれるようだった。

『…俺んち来る？』

「…えっ」

聞き間違いじゃないよね…

今の。

『俺も…ほんとは帰したくないから』

「…っ」

『来る？』

「…うん」

消えかかるような声で返事をすると、すぐそこにある駅に向かって歩き出す。

どこ行きの電車か分からないまま、樹くんに抱えられながら乗り込んだ。

それなりに満員電車のせいで彼との距離感は0で。

手すりに寄りかかるようにされれば、近距離で向かい合う私たち。

『具合悪くなったら言って？』

「うん…」

そう耳元で呟かれると、3駅ほど離れた駅で電車から降りた。

改札を出ると、見たことのない景色が広がってなんか新鮮。

『歩ける？』

「うん、大丈夫…」

そんな気遣いをしながら私を抱えてゆっくり歩き出す樹くん。

5分ほど歩くとマンションが見えて、その中に誘導されるままに足を進めた。

エレベーターに乗せられて3階まで行くと、

『こっち』

と言われてなんとなく視野を広げてみれば、まぁまぁ綺麗なマンション。

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