溺れる偽愛 (ページ42)

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「私が高校生の時に離婚したの。原因は詳しく分からないけど…仲が悪くなったとしか教えてもらえなかった」

本当は、離婚の原因がそんな曖昧な理由なんかじゃないと気付いていた。

高校生の私でも分かるくらいに。

でも聞けなかった。

気遣ってるのもあったけど、知りたくなくて

10代の私にはあまりにも苦しい現実だった。

「ペンは中学生の時に誕生日で貰ったんだけど、ずっと大事にしてて」

『…そうだったんだ』

「あのペンを見ると、いつも父親のこと思い出す」

『…そんな大事なものを…俺』

「いや、もういいの。いつか忘れなきゃいけないとは思ってたから。いいきっかけになった」

『…』

そんなのは強がりで。

でも…そうでもしないと自我を保てなかった。

コップに残っているお酒を全て飲み干して、今の感情を無くすように掻き消す。

『…お父さんには会ってないんだっけ？』

「うん。きっともう会わない約束でもしてるんじゃないかな、親同士が」

別に…こんなことは普通の話で。

離婚なんてのは珍しいことじゃない。

悲劇のヒロインぶってるような感覚になった私自身が気持ち悪いほど嫌いだと思った。

『こんなこと言うの申し訳ないけど』

そんな時、樹くんがそう声を上げた。

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