溺れる偽愛 (ページ33)

今日:19 hit、昨日:2 hit、合計:490,599 hit

33 ページ33

.
.

翔「Aちゃんはそのどれにも当てはまらなさそうだから。きっと惹かれる部分がいっぱいあったんじゃないのかな、樹は」

「…」

違う。

そんなんじゃない。

罪悪感と違和感が合わさって、どうも胸の辺りが気持ち悪い。

私は渡辺さんの言葉に何も言えなかった。

翔「Aちゃんは？」

「え？」

翔「どうして樹を選んだの？」

「それは…」

なんて言えばいいのか分からない。

本当のことなんか言えるわけもなく、どう嘘をつけばいいのか悩んでいると

タイミングよく樹くんが帰ってきてくれた。

翔「なんだよもう帰ってきたのかよ～」

『なんでだよ！なに、なんか話してた？』

そう言って渡辺さんと私を交互に見る樹くんに困っていると

翔「樹の悪口言ってたんだよね？Aちゃん」

「えっ…あ、」

『なんだよそれ笑。やめろよ』

話を逸らしてくれたのは渡辺さんの気遣いなのだろうか。

今までにあった変な空気感も次第に薄れ、何事もなかったかのように彼らはじゃれあっていた。

類は友を呼ぶってこういうことなのかな。

渡辺さんも樹くんと同じくらいいい人なのかもしれない。

会ってそんなに経っていないのに何故かそんなふうに思えた。

.
.