溺れる偽愛 (ページ32)

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『ちょっとトイレ行ってくるわ』

「えっ？あ、、」

この状況で1人でトイレに行った樹くん。

そして残された私と渡辺さんのこの空気感は、ひたすら気まずいとしか思えなかった。

翔「あいつが彼女作るなんて珍しいんだよ」

「え？」

翔「あんまり彼女いるとこ見たことないからさ」

「そうなんですね…」

コーヒーをすすりながらそう話してくれる渡辺さん。

意外にも話しやすい人で驚いてしまった。

翔「だからちょっとびっくりしたんだけど、樹が君を選んだの分かる気がするな」

「…えっ」

その言葉を聞いて、私は声を出せなくなった。

だって…そんな健全な交際じゃないから。

翔「今まで樹に寄ってた女って派手な女かメンヘラちっくな子ばかりだったからさ。まぁあいつは上手く交わしてたけど」

「…交わしてた？」

翔「うん。今までモテてきたから慣れてんだろうな、あいつ」

私は、“交わしてた”という言葉が、一概にどういう意味を持つのか分からなかった。

だってそれ、

“抱いてる” ってことなんじゃないの…？

そんな余計な不安が煽った。

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