溺れる偽愛 (ページ27)

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『大丈夫？寒くない？』

「うん…」

『家どこ？』

「あっち…」

方向を指差して示すと、支えてもらいながらそっち方面に足を進め始めた。

『ホテルとか行かないから安心して』

「…え？」

『あいつらが言ったこと気にしなくていいから』

「うん…」

あれ。

私なんでちょっと落ち込んでるの…。

バカみたい。

もしかしたら、初めてを経験するかもしれないって思った自分が恥ずかしい。

なんとなく動く思考回路の中で、ちょっと調子に乗ったことが腹ただしく感じた。

「ここ…」

『ここか』

歩いている間、特になにも話さないまま到着した自宅。

樹くんの体が暖かいせいか居心地が良くて、ここから離れたくないと思った。

『何階？』

「4階…」

エレベーターに乗せられると、明かりが直に当たって眩しい。

樹くんは、こんな姿になった私のことをめんどくさいと思っているのだろうか。

『何号室？』

「405…」

『鍵は？』

ドアの前に着くと、鍵を鞄から出して開けてもらう。

なんか、ここまでくるのに色々考えすぎてより疲れてしまった気がした。

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