溺れる偽愛 (ページ26)

今日:62 hit、昨日:12 hit、合計:490,563 hit

26 ページ26

.
.

慎「いつから？」

『最近』

慎「へ～、びっくりだわ」

いくら酔いが回ってるとはいえ、樹くんの言葉に思わず照れてしまう。

てか…本当にそう思ってるのかな。

何回か私と樹くんの話をしたあと、みんなそれぞれガヤガヤし始めたから少しホッとしている自分がいた。

だっていつまでもこんな話されてたらキリがないから。

相変わらず樹くんは私の隣に座ったままで動こうとしない。

それでもこの場にいる女子の視線を感じて気が散ってしまう。

やっぱり…よく思ってないんだろうな。

私と樹くんのこと。

そんな嫌な視線と変な考えを紛らわせたくて、近くにあった焼酎をコップに注いで喉に流し込んだ。

きっつ…

焼酎なんてほとんど飲んだことないからか、喉が焼けるように熱くなって辛い。

『は？なにやってんの』

焼酎を飲んだ私の異変に気付いた樹くんが、慌てるようにコップを取り上げた。

『もう飲むなって言ったじゃん』

「でも…」

『もう帰ろ。な？』

私だけに聞こえるように距離を縮めてそう言った彼は、鞄から財布を取り出してお金を置いた。

『ごめん、俺ら帰るわ』

慎「え！？もう帰るの？」

『ちょっと酔っぱらっちゃったし。Aも一緒に連れてくわ。金、俺らの分ここに置いとくから』

周りが惜しむ声を上げているのに対して、私はさっきの焼酎が響いて頭はクラクラするし目は虚ろだし、よく分からない。

『ほら、A立って。行くよ』

「…うん」

《お前らホテルとか行くなよ～》

《避妊はしっかりな！》

『うるせーよ』

そんな言葉が耳に入って、少しだけ心臓がドキッとしてしまう。

付き合ってるんだからそういうことも…。

いや、やめよう。

そのまま樹くんに支えられながら立つと、荷物を全部持ってもらって店を出た。

.
.