溺れる偽愛 (ページ21)

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そのまま席に着くと、樹くんは慎太郎と斜め前の方の席に座って、私と紬は後ろの方に座った。

教授が来て授業が始まると、ノートだけ開いて進まない手。

紬「なんかさっきの短時間で田中樹と仲良くなってない？」

「裏庭で少し話してたから」

紬「なるほどね」

「あのさ…慎太郎には言わないでほしいの」

紬「なにを？」

「ペンがきっかけでこうなった事」

紬「いいけど…なんで？」

「慎太郎は悪くないし、それに…責任感じそうだから」

私が被害者なのにこんな気を使う必要なんてないと思う。

だけど、慎太郎はいい人だと知っているからこその考えだった。

斜め前の方の席にいる慎太郎を見ると、樹くんと楽しそうに話している姿が目に入る。

そんな風景を見たら、悪者になんて出来なかった。

紬「分かった。誰にも言わないよ」

「ありがとう、紬」

再びあの2人に視線を移すと、何を話しているのかずっと止まらない笑顔と口元。

でもどこか切なく感じるのは、樹くんの視界の端にはきっと私が映っているはずなのに1回もこっちを見ない事。

私がどれだけ見つめても彼と目が合うことはなかった。

それが、“お前のことなんとも思ってない”と言われているようで。

勝手な解釈をしてしまう私はどうかしてると思った。

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