溺れる偽愛 (ページ3)

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慎「あ、A。ちょっとペン貸して」

「なんでよ」

慎「レポート書きたいんだけどボールペン忘れちゃったんだよ」

「もうしょうがないな」

うちの学校のレポートは、必ずボールペンで書かなきゃいけないというルールがあった。

自分の筆箱からペンを探すと、いつも使っているボールペンが無い。

その代わりにあったのが、私がずっと大事にしてきたパパから貰ったボールペン。

中学の頃に貰ったもので、ただのボールペンじゃない大人っぽい雰囲気がある所がとてもお気に入りだった。

でも高校生の時に両親が離婚して父親と離れてしまい、それ以来会っていなくて。

大事なものだから本当は持ち歩きたくなかったけど、手元にあればいつでもパパの事を思い出せるから持っていたのだ。

本当は貸したくないけど…仕方ない。

「はい」

慎「お、サンキュー」

「ちゃんと返してね」

慎「あったりまえよ～」

調子がいい慎太郎に笑みが溢れると、その数分後に講義が終わった。

ただこの時はまだ知らなかった。

このペンで人生が変わることを。

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