溺れる偽愛 (ページ17)

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講義を終えると、紬はこのあとの授業も受けるからとその場に残った。

私はその時間は暇になるため、トイレに行ったあと裏庭のような場所へ向かって1人で座っていた。

あー…どうしちゃったんだろ、私。

別に田中樹に興味なんてないのに。

謝ってもらえればそれだけで良かったんじゃないか。

でも…それだったらきっと私の気が収まらなかったんだろうな。

『あ、Aちゃんいた』

急にそんな声がして振り向くと、田中樹が微笑みながらこっちに向かってきていた。

『こんなとこにいたの』

「田中くん、講義は？」

『この時間はないから大丈夫。てか俺の名前知ってくれてたんだ』

そう言って普通に私の隣に座ってきた彼に、どうしたいいか分からず言葉を失った。

『そういえばさ、さっきの教室のみんなの顔見た？』

「え？」

『俺がAちゃんと話したとき。みんな驚いた顔してたじゃん。マジ面白かったわ』

「面白い…？」

『うん。人って驚いたらあんな顔するんだって思ったら面白くない？』

この人は、もしかしたら普通の人と感覚が違うのかもしれない。

それはきっと、今まで人に関心がないのにいつも周りには誰かがいたから。

友達作りにも彼女作りにも困らなくて、執着がないからこその感覚なのかもしれない。

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