19 再会 ページ20
あの人に会いたいわけではなかった。酷いことをしてしまったと、自覚していたから。だけど――本当は、会えたらいいなという淡い希望は持っていたのだと思う。
二度目に彼女と出会ったあの店を訪れ、カウンターで一人グラスを傾ける彼女を見つけてしまったとき、罪悪感に混じってほんの少しだけ、喜びに似た感情が生まれたようだから。
「あ」
彼女も俺に気づいたみたいで、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。俺は気まずさに視線を逸らすけど、「愛染、くん」俺の名を呼ぶ彼女の隣へと近づいた。
「ここ、いい？」
「…どうぞ」
右隣りの椅子に腰かけて、カクテルを注文する。運ばれてくるまでは互いに無言だった。俺の前にグラスが置かれ、彼女のそれと触れ合わせていいものか一瞬迷うと、
「乾杯」
彼女はすっと手を伸ばして、かちんとぶつけてくれた。「…うん」違う、俺が出すべき言葉はそれじゃない。
もし。もしも彼女に会えたなら、言わなければならない言葉があった。
あの言葉にかき乱された自分を認識したときから、この乖離する俺自身をどうにかしないといけないと、強く感じていた。仕事でもイライラしがちになり、プライベートで遊ぶことさえままならない、この歯車が狂いきった状況を。
そのために、いつか俺はこの人と会わなければと思っていたのだ。
まさかこんなに早く会うことになるとは思っていなかったけど。
「あの」
しかし、声を出したのは彼女の方が先だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まほし(プロフ) - もなか杏さん» 閲覧いただき、ありがとうございました。愛染くんにありったけの愛を込めたので…本当に、幸いです。誰にせよ、愛を得るというのは難しいものですよね…だけど愛染くんには幸せになってもらいたいです＾＾応援ありがたいです！今後ともよろしくお願いいたします。 (2017年5月26日 22時) (
レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
もなか杏 - 素晴らしい作品でした！ケンケンが求めてるものって恐らくこの作品の様な愛だと思います。でも彼の本当に欲しい愛を見つけるには時間がかかりそうですね。笑笑 本当にこんなケンケンだから大好きです。そして、作者様を密かに応援しております。笑笑 (2017年5月24日 21時) (レス) id: d7228412fa (このIDを非表示/違反報告)
まほし(プロフ) - たけもとさん» 読んでいただき、ありがとうございます！こっそりついったーまで…いつもありがとうございます（照 彼がしあわせを見つけるにはまだしばらくかかりますが、どうぞお付き合いよろしくお願いいたします。 (2017年3月3日 16時) (レス) id: 98138b6672 (このIDを非表示/違反報告)
たけもと - 小説読ませていただきました。愛染さんとどうなるのかドキドキしながら読みました、今後の物語の展開が楽しみです。こっそりTwitterの方のBプロプラスも拝見しています、いつも素敵な夢をありがとうございます。 (2017年3月2日 15時) (レス) id: f553facffe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まほし | 作成日時：2017年3月2日 0時
