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『…なに?』
「っ…いえ何でも」
樹さんはたぶん。いや、もう。
もうきっと、わたしの気持ちになんか気づいてる。
初めて出会ったときから否応なく惹かれていたことに。
たった10分がこんなにも早く過ぎるなんて思わなかった。
だけど…こんなに大切にした10分は今までになかった。
店について車を止めると、再び静寂がわたしたちを包む。
『昨日…あれからきょもとは何もなかったんだよな?』
「…あれからって?」
『…』
「まさか…ここに来たんですか?」
『…』
だから沈黙は肯定を生むんだって。
…あれから樹さんはここに来ていた…
疑問しか思い浮かばない。
『楽しそうだったな』
「…はい、楽しくお話してました」
『アイツは彼女いんぞ』
「知ってます。そういうのじゃなくて本当にただのお友達ですから…」
『男女の友情ってやつ?』
「はい」
『それって成立すんの?』
「わたしには。地元にも慎太郎って言う大事な親友もいます」
『…』
「樹さんは男女の友情は信じないんですか?」
『まぁ…』
じゃあ、全ての女を…
やめよう、また落ち込んできた。
『高地は?』
「はい?」
『アイツは友達?』
「そうだと思います」
『ジェシーは?』
「まだ良くわかりません。でも車貸してくれて優しくて友達になりたい人です」
『北斗は?』
「北斗さんは…この街で一番親切で、優しくて…あったかい人です」
『それってオトコとして見てんの?』
「まさか…でも友達っていうにはまだ二人とも早すぎるってだけです」
『…俺は?』
「…」
…樹さんは友達なんて思えない。
それ以上を望んでしまっている自分がいるから…
「分かりません」
『…俺はアイツら以下ってことかよ…』
「以下も以上もありません。ただ樹さんとわたしが友達だなんて…」
『じゃあ、なってよ』
「…友達に?」
『そう』
「近づくな、って言ったのに?」
『それは、…』
友達なら近づいてもいい?
無理なんて言われない?
「…分かりました、いいですよ」
樹さんはハッとしてこちらを見た。
『男女の友情?』
「はい」
わたし達は今この瞬間から友達になったらしい。
意思の弱さなんてもうこの際どうでもいい。
好きな人に嫌われたくない、少しでも違う形でも近づきたい。
友達としてここにいれるなら、それでいい。
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くらら(プロフ) - uskさん» コメントありがとうございます。すごく嬉しいです。もう一波乱ある予定ですがエンドロールまでお楽しみいただければ幸いです。 (2021年9月15日 21時) (レス) id: f815a3c4d3 (このIDを非表示/違反報告)
usk(プロフ) - 映画を見ているみたいなロマンチックなお話だな、と思っています! (2021年9月15日 0時) (レス) id: 9866245c6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Clara | 作者ホームページ:https://instabio.cc/30822109WE21W
作成日時:2021年9月3日 20時