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助手席に乗った瞬間、被されたパーカーが剥ぎとられるようにして消えたと思ったら強く、強く樹さんに抱きしめられた。
『…ごめん本当に』
「ううん」
樹さんはわたしの腫れた頬をそっと撫でて、痛そうな苦しみに歪んだ表情を見せた。
「伶菜さんは大丈夫?」
『…アイツの心配なんかしなくていいから』
「でも、」
『いいんだって』
「…」
『帰ったら話したいことがあんだけど、いい?』
「…分かった」
きっとこの街の誰もが知っている噂の話。
そしてその真実。
何があったのか、それを知るときだと悟った。
車を運転する樹さんをそっと見ると、固い表情でただただ前を見据えていた。
何かを決意したように。
何かを覚悟したように。
それがわたしにとって残酷なものだとしても。
ガレージに着いてゆっくりと助手席から降りるわたしの手を繋ぎ家に入った。
その瞬間……。
『は?』
樹さんが固まった。
目線の先にはわたしには到底履けそうにないハイヒールが2足。
急いで靴を脱ぎ捨てリビングに向かっていった彼のあとを追う。
今は…会いたくなかった。
つんざくような音で耳がキンキンとする。
伶菜さんが大きな声でわたしを見るなり罵倒しているのが分かる。
だけど大粒の涙で何を叫んでいるのかも正直よく分からなかった。
部屋の奥には北斗さんとジェシーさんもいた。
家に送ったと言うのはこっちの家に変更があったらしい。
きっと暴れまわっているこの伶菜さんを宥めるにはそれしか術がなかったのかもしれない。
そして……
その彼女を宥めるように寄り添うのは沙知代さん。
その傍らにはろくでなしが、父がいた。
2人とも急いで駆けつけてきました、というような。
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くらら(プロフ) - uskさん» コメントありがとうございます。すごく嬉しいです。もう一波乱ある予定ですがエンドロールまでお楽しみいただければ幸いです。 (2021年9月15日 21時) (レス) id: f815a3c4d3 (このIDを非表示/違反報告)
usk(プロフ) - 映画を見ているみたいなロマンチックなお話だな、と思っています! (2021年9月15日 0時) (レス) id: 9866245c6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Clara | 作者ホームページ:https://instabio.cc/30822109WE21W
作成日時:2021年9月3日 20時