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『…もう一回』
二人の纏う空気がたちまち濃密なものになる。
またそっとキスを落とした。
離れようとしたとき樹さんの手ががっしりとわたしの背中に添えられ、もう片方の手は頬を抑えて、何度目かの深いキスに変わっていく。
波の緩やかな音を背に聞きながら、わたし達は唇を重ね合わせていた。
化粧をしたあとに、鏡で顔を確認する。
…唇をふと目で追ってしまう。
指で唇をなぞった。
何度も何度もなぞる。
…この唇に何度も何度も樹さんが触れた。
交わしたキスが忘れられない。
思い返すたび体にゾワゾワと鳥肌が立ち、一気に甘い記憶へと引き戻される。
ここがどこだか忘れるくらいに。
だめだ、すぐにトリップしちゃう。
我に戻るように頭を振って制服に着替える。
昨日は本当に素敵なデートをした。
生まれて初めてのデート。
生まれて初めての恋人と。
急いで支度を終えて部屋を出てリビングに向かうと樹さんがあくびをしながらソファに座っていた。
「え！起きてる…」
この時間に起きてるなんてありえるの？
だってすごく朝が弱いんだって昨日も言ってたからびっくりした。
『用意できた？』
「うん…？」
『じゃあ、行くか』
「へ？」
『…送ってく』
「でも、」
『いーから』
わたしたちの10分間が始まる。
『帰りまた迎えに行くから』
「そんな、流石に悪いよ」
『彼女の送り迎えぐらいさせろよ』
まだ慣れないその響きに思わず顔がニヤける。
「…ありがとう」
『ん』
10分のそのドライブはまた、わたしを幸せにしてくれる。
車が店に到着して止まると、樹さんがこっちをチラって見た。
「なに？」
何も言わずに唇をトントンと指で叩いた。
そういえば今日はまだ朝のキスをしていなかった。
くすっと笑いが漏れて、運転席の樹さんにキスをした。
「行ってきます」
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くらら(プロフ) - uskさん» コメントありがとうございます。すごく嬉しいです。もう一波乱ある予定ですがエンドロールまでお楽しみいただければ幸いです。 (2021年9月15日 21時) (
レス) id: f815a3c4d3 (このIDを非表示/違反報告)
usk(プロフ) - 映画を見ているみたいなロマンチックなお話だな、と思っています！ (2021年9月15日 0時) (レス) id: 9866245c6d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Clara
| 作者ホームページ：https://instabio.cc/30822109WE21W
作成日時：2021年9月3日 20時
