64 ページ19
酸欠でフラフラした。
外の空気が生温かくて余計にクラクラする。
わたしの腕を掴んだまま、家の鍵を開け様子を伺いながら2階に連れて行く。
腕を掴むその力が優しくて。
長い廊下の前を歩く樹さんの背中を見ると心臓を素手でぎゅうっと掴まれたような気持ちになる。
いつの間にか、こんなにも思いが募ってしまった。
好きで、好きで、好きで、今すぐその背中に抱きついてしまいたい。
「えっ…あの、部屋!」
樹さんはわたしの部屋を素通りして、
そのままずんずんと進んで突き当たりの部屋のドアを開けて、中に入った。
「ここ、」
『俺の部屋』
そう言うと、そっと向き合った。
見つめ合う。その目が切なく揺れた。
どうしてそんな目でわたしを見るの。
樹さんが手を伸ばし、わたしの頬をそっと撫でた。
優しく…まるで割れ物に触れるみたいに。
歯がカタカタと震えた。
ずっと触れてほしかった。
触れたかった。
樹さんに見てほしかった。
心の底では、そう願っていた。
『悪いけど、アンタと友達なんて無理だ』
「…」
『あんなところを見せたのは…俺から離れさせるためだった…俺なんか嫌いにさせたかった』
「…どうして?」
『俺はアンタにふさわしくねぇから』
「…」
『ふさわしくねぇんだよ。幸せになんてできねぇから』
「…だから近づくなって言ったんですか?あの時…海で」
『…』
「樹さんは…わたしの気持ち、もう知ってたんですよね…?」
樹さんはよく沈黙する。
でもそれは肯定を生むと何度も思い知った。
距離の近さから、わたしのおでこと樹さんのおでこがコツンとぶつかった。
息が顔にかかる。
鼓動もその体温の熱さも、全てが手に届く。
『でも無理だった…アンタが他の男と仲良くしてんのも、いやらしい目で見られんのも…全部我慢できねぇ』
1138人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
くらら(プロフ) - uskさん» コメントありがとうございます。すごく嬉しいです。もう一波乱ある予定ですがエンドロールまでお楽しみいただければ幸いです。 (2021年9月15日 21時) (レス) id: f815a3c4d3 (このIDを非表示/違反報告)
usk(プロフ) - 映画を見ているみたいなロマンチックなお話だな、と思っています! (2021年9月15日 0時) (レス) id: 9866245c6d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Clara | 作者ホームページ:https://instabio.cc/30822109WE21W
作成日時:2021年9月3日 20時