検索窓
今日:13 hit、昨日:36 hit、合計:244,486 hit

58 ページ13

「いらっしゃいませ」
「今日カウンターいい?」
「あ、…どうぞ」
「よっしゃ」
ペタペタと独特な足音を鳴らしながら3人がわたしの前を占領した。


「何になさいますか?」
「ビール3つ」
「かしこまりました」


菜摘ちゃんの方をふ、と見ると、口パクで「大丈夫?」と聞いてきた。
どうやら菜摘ちゃんもこの人たちが苦手らしい。
わたしはグーサインを作って返した。


「Aちゃんってさ、田中樹の妹ってマジー?」
「…いえ、妹ではないです。」
「じゃあ何?」
「親戚みたいな…」


これならあながち間違ってもない。
樹さんに迷惑をかけない返答になったはず。


「そうなんだ、俺らてっきりアイツの妹かと思ってたからさー」
「な。ならもっと仲良くしようよ」


ならもっと仲良く。それはどういう意味?
わたしが彼の、樹さんの妹ならば仲良くしたくないということ?
疑問は深まるばかりで。
それが顔に出ていたのか、

「なんつーの?あいついけ好かねぇんだよな。住む世界が違うっての?
ありありと見せつけてる感じとか」

目の前で繰り広げられる、3人のどうでもいいような気だるい話にも一生懸命笑った。
インセンティブのために。
後ろを向いてドリンクを作る瞬間が唯一ホッとできるかもしれない。
さすがにずっと目の前で絡まれるのは疲れる。


閉店時間まであとどのぐらいかなと時計を見ようとしたとき、白いTシャツの上に煌めくゴールドの輝きがわたしの目に飛び込んできた。


「いらっしゃ、」
菜摘ちゃんが樹さんに気づいて一瞬だけわたしを見た。


「いらっしゃいませ、お一人ですか?」
『あぁ』
「こちらへどうぞ」


本当に来てくれた。
迎えに来てくれた。
その事実が信じられなくて、思わずニヤけてしまいそう。
いくら意思の弱い女だって思われてもいい。
そう思われたって仕方ない。
でも、嬉しくってたまらない。


『カウンターいい?』

席に案内しようとする菜摘ちゃんを止めて、3人組から2つ席を開けた一番端っこに樹さんは座った。
その瞬間にあの匂いが、ふわりと鼻腔に入ってきて、まるでお酒に酔ったかのようにふわふわする。



わたしの目の前に。
私たちを隔てるものはカウンターだけ。

59→←57



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (299 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1138人がお気に入り
設定タグ:田中樹 , 松村北斗 , SixTONES
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

くらら(プロフ) - uskさん» コメントありがとうございます。すごく嬉しいです。もう一波乱ある予定ですがエンドロールまでお楽しみいただければ幸いです。 (2021年9月15日 21時) (レス) id: f815a3c4d3 (このIDを非表示/違反報告)
usk(プロフ) - 映画を見ているみたいなロマンチックなお話だな、と思っています! (2021年9月15日 0時) (レス) id: 9866245c6d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:Clara | 作者ホームページ:https://instabio.cc/30822109WE21W  
作成日時:2021年9月3日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。