先輩の事、嫌いです。 (ページ28)

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「A」

その声に振り返る。

『…慎ちゃん』

なんか、付き合ってた頃よりは遥かに、一緒に帰った時よりもなんとなくさらにかっこよくなった？

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『慎ちゃんだよね？私を運んでくれたの』

慎ちゃんは小さく言う。

慎太郎「…どうして？」

『…慎ちゃんが仲のいい、、あの騒がしい男の子達が教えてくれた。』

そう言うと、慎ちゃんは頭をぽりぽり掻きながら「バレたか。笑」って笑う。

…この笑顔、懐かしいな。

『…ありがとう。助けてくれて』

慎太郎「ん。」

柔らかく笑いながら私の頭をポンポンしてくる。

急に恥ずかしくなって私は下を向いた。

『私、重くなかった？』

慎太郎「あーまあ、、、みんなが見てるところではかっこよくキメて歩いてたけど、隠れたところで休憩しながら言ったのは内緒な！」

そう意地悪く言う慎ちゃん。

『…もう！』

慎太郎「ははっ。嘘だって！心配になるくらい軽かった。笑」

落ち着くなあ、この感じ。

『保健の先生もきょもも誰が私を運んできてくれたのって聞いてもだーれも教えてくれなくて。

きょもと喧嘩になっちゃった。笑』

慎太郎「あ、それ俺が黙ってて欲しいって言ったから」

『…え、どうして？』

慎太郎「だってA、申し訳ないとか余計気使うだろ。…それに、もうあんまり俺と関わりたくないかなって…」

『そんな事ない。関わりたくないとかは全く思ってないよ…』

慎太郎「え、あ、そうなの？」

そう、そんな事は思ってない。

笑ったり、びっくりしたり、シュンとしたり、、

クルクル表情変わるなあ、慎ちゃん。

べつに慎ちゃんを嫌いになって別れた訳じゃない。

私がだめだめだったから、慎ちゃんに振られた、ただそれだけ。

今、慎ちゃんからまた強く「好きだ」って言われたら戸惑うかもしれない。

また、ゆるいじゃうかもしれない。

…だけど、

私は今、松村先輩が好き。

慎太郎「…じゃあ、『私ね、』

『私ね、好きな人がいるの』

だから、言われる前に振らせて。

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