迫る勝負のとき ページ10
fk side
iw「ふっか、ちょっと頼みがあるんだけどさ」
照に声をかけられたのは、それからすぐのことだった。
iw「うち今水道管がトラブっててさ、床水浸しなの。だから悪いんだけど、今日から何日かふっかんち泊めてくんねぇ？」
もちろん普段であれば快諾するところだが、今この状況で泊まりに来られるのは危険だ。
でも、正直今の生活に疲れ果てた俺は、1人になるのが怖い、照にそばにいて欲しいなんて甘えたことを考えてしまう。
その2つの気持ちの間で俺はしばらく葛藤して、答えられずにいたのだけれど、
iw「ね、お願い！」
なんて困り顔で手を合わせる照に負けて、結局泊まってもらうことにした。
iw「めめ、今度また新曲出すみたいだな」
「相変わらず人気だよね」
iw「この前佐久間が来てたTシャツ、あれ何？」
「なんか有名なアニメらしいよ。映画化もされたことあるって」
帰り道、取り止めもない話をしていると、あっという間に家に着く。
ポストに何か入っていたらまずいなと思ったけれど、相手は照が来ることも把握しているのか、怪しいものは何一つ入っていなかった。
ほっとする一方で、その周到さが気味悪くもある。
「適当に座ってて。麦茶でいい？」
iw「おう、サンキュー」
そのうち筋トレを始めた照を横目に、俺はぼんやりと雑誌をめくる。
なんだか、すごく久々にこんなにゆったりと寛いでいる気がする。
次の日もその次の日も、俺たちは朝から晩までずっと一緒だった。
メールや店へのプレゼントは止まなかったけれど、家で心が休まるだけでも大分違う。
sk「本当お前ら夫婦か」
iw「仕方ないじゃん、俺家帰れないんだもん」
「まあ2人暮らしも悪くないけどな」
そう言って笑い合うたび、照の家の水道管がずっと直らなければいいのになんて思う。
でも、そんな幸せな時間は、すぐに終わりを告げたんだ。
痺れを切らしたあいつが、こんなメールをよこしたから。
『最近辰哉くんにべったりのあいつ、そろそろ釘刺してあげないといけないんじゃない？』
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作者名：わかめ
| 作成日時：2020年2月22日 11時
