世間は狭い ページ36
fk side
ある日のこと、夕方のお客さんが少ない時間を狙ったかのように店の電話がなった。
「はい、Zuhause でございます」
ab「あ、もしもしふっか？阿部ですー」
出てみると、相手は今日オフのはずの阿部ちゃんだった。
出かけ先からかけているのだろうか、電話口の声が騒がしい街の音にかき消されて、少し聞き取りづらい。
ab「あのね、急で悪いんだけど、今日夜ちょっと友達を店に連れて行きたくて。大丈夫？」
そういうことならもちろん大歓迎だ。
というか、阿部ちゃんも俺がOKするのをわかっててかけてきているような気さえする。
「了解、何時くらいになりそう？」
ab「そっちに合わせるよ。どうせなら遅い方がみんなと話せるかな？」
「そうね」
ab「おっけ、じゃあ別の店で軽く飲んでから行くわ。
あ、佐久間も今日いるよね？あいつには是非会ってもらいたい人だから、マストで空けてもらって」
「え、そうなの？誰？」
ab「なーいしょ。楽しみにしてて」
そう言って電話は切れてしまった。
スタッフの友達が遊びに来ることは今までも度々あった。でもそれは俺や翔太の友達が中心で、阿部ちゃんが人を連れて来たことはあまりない。
そんな阿部ちゃんが紹介したいというくらいだから、相当仲良しなのだろう。阿部ちゃんの友達なら、きっと頭が良くて真面目な感じの人かな？
にしても、佐久間に会わせたいなんてこれまた珍しい。大人しい人だったら、佐久間のテンションにはついていけないんじゃないか…？
一抹の不安は残るけれど、とにかく俺にできるのはゆっくり待つことだけ。
俺はひとつ息を吐くと、いつもどおりの笑顔でお客さんのもとに戻ったのだった。
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作者名：わかめ
| 作成日時：2020年2月22日 11時
