僕たちの帰る場所3 (ページ20)

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人生は一度きりページ20

kj side

それから程なくして、俺の受賞が正式に発表され、写真集も発売された。
写真集はZuhauseにも一冊プレゼントしたところ、お客さんの間でも話題になったようだ。

それにしても、あの時プロのカメラマンという話が出たのには内心ドキッとした。
なぜなら自分自身、もしかしたら声がかかることがあるんじゃないかって甘い夢を思い描いていたからだ。

けれど、それはあくまで甘い夢であり、してはいけない期待のはずだった。
それなのに今、その甘い夢が現実のものになろうとしているとは…

mg「康二に会いたいっていう人がいるんだけど」

めめからそう切り出されたのは、つい昨日のことだ。

聞けば、めめは仲良しのカメラマンさん達に、友達、もとい俺がコンテストで賞を取ったと自慢しまくっていたらしい。
それで、その中の1人が俺の写真に興味を持ってくれ、ぜひ会いたいから紹介してくれと頼まれたのだそうだ。

俺は正直迷ったけれど、
mg「すごく面白い人だから、話だけでも聞いて」
というめめの強力なプッシュに根負けしてOKを出した。

そして今日、めめに連れられてやってきたのは、まさにめめの雑誌で使っているというスタジオだった。
今日は何かの企画モノの撮影なのか、お洒落なリビングルーム風のセットが広がっている。

「うっわ、俺本当にこんなとこに入っていいん？」
mg「今日は特別」

そんなことを話していると、1人の男性が俺たちのもとに近づいてきた。
いや、突進してきたという方が近いかもしれない。

『Ren、待ってたよ～！今日はよろしくね』
mg「よろしくお願いします、裕翔さん」

そして、今度は俺の方に向き直ってこう言った。

『君が向井くん？』
「あっ、はい。今日はありがとうございます」
『いやいや、俺が呼んだんだし。楽しんでいって』

そしてポンと俺の肩を叩くと、撮影機材を組み立てにかかる。

「えっと…彼が例のカメラマンさん？」
mg「そう。裕翔さんっていって、俺らと同じくらいの歳なのにカメラマンとして名をあげてるすごい人なんだ」

若いし長身だからモデル仲間かと思ったのだが、どうやら違ったらしい。

『じゃあ撮影始めるよ～』
妙にハイテンションな裕翔さんの掛け声と共に、撮影が始まった。