僕たちの帰る場所3 (ページ17)

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好きなことを好きなだけページ17

kj side

2月もそろそろ終わりに近づいたある日、いつものように仕事帰りにZuhauseに向かおうとしていた俺のもとに、一本の電話があった。

ディスプレイには見覚えのない番号。
何かのセールスだろうかと思い出るのを一瞬躊躇ったが、仕事関係だといけないと思い直して通話ボタンを押す。

「もしもし？」
『向井康二さんの携帯でお間違いないでしょうか。』
「そうですが…」

『私、フォトストーリーコンテスト事務局のサトウと申します。
この度、ご応募いただきました作品が金賞に選ばれまして、そのお知らせでお電話を差し上げました』

フォトストーリーコンテストは人物写真を題材にした有名コンテストで、様々な場面の人物の表情を切り取って、それにまつわるエピソードとともに応募するというものだ。

俺は毎年応募だけはしているものの、応募総数もそれなりに多く、今までは箸にも棒にもかかっていなかった。それがいきなり金賞だなんて。

「えっ…と…金賞…？」

金賞って、あの金賞で合ってるよね…？
俺の写真が、金賞？

すると、若い女性らしき電話の相手がふふっと笑った。
『はい、金賞です。それでですね、データの送付と、受賞のことばを200字程度でお願いしたいのですが…』

その後もサトウさんは色々な説明をしてくれたように思うが、俺の耳にはなかなか入ってこなかった。

『…では、よろしくお願いします』
「え、あ、はい！ありがとうございます！」

電話を切った俺は、よっしゃ、と小さく呟くと、改めてZuhauseに向かった。
嬉しいニュース、みんなに報告しなくちゃ。