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fk side
またやってしまった。
どうも、考えなしの賭けに出るのが俺の悪い癖みたいだ。
親父さんは明らかに怒ってるし、阿部ちゃんは見事に固まっている。
そんな俺に助け舟を出してくれたのは、やっぱり照だった。
iw「大変失礼を申し上げました。ですが、圧力の話は少なくとも事実ですよね?調べればすぐにわかることです。
お父さん、阿部が戻ってきてから、どれくらい言葉を交わしましたか?
今まで離れていた息子がどういう風に暮らしていたのか、聞きましたか?阿部がどうして戻ってくる気になったか、聞きましたか?」
阿部ちゃんも親父さんも気まずそうに目をそらす。そこにこの親子の歪んだ関係が垣間見えたような気がした。
『そんなこと、君たちには関係ないだろう』
iw「俺の父親は、事業に失敗して自ら命を絶ちました。それで母親も病んで、俺に暴力を振るうようになって、しばらく離れているうちに最後は病気で亡くなりました。
俺は母の死に目には会えなかったけれど、後から聞いた話では、母は俺のこと、すごく後悔しながら亡くなったんだそうです。夫を失ったショックで、俺のことが見えなくなっていたって。
どうして自分の息子のことをもっと見てやれなかったのか、暴力を振るって拒絶されるような真似をしてしまったのか、って…」
照の声が震えている。
あいつは今、必死に戦ってるんだ。
iw「阿部のこと、もっときちんと見てください。
このままじゃ、あなたもいつか絶対後悔します。それに、阿部の心にも一生消えない傷が出来てしまいます。
こいつが本当は毒舌でポンコツだってこと、自由で愛されるべき存在だってこと、あなたわかってますか?!」
ab「照…」
照の叫びに、ここにいる全員が圧倒されている。
こうなるともう独壇場だ。
iw「俺の両親は亡くなったけど、あなたはまだ生きてます。生きていれば、まだやり直せます。
だからどうか、無理強いするようなことはやめてください」
親父さんは、そこで静かに口を開いた。
『そこまで言うとは大したものだ。亮平、いい友達を持ったな』
fk「だから俺たちも、無理やり阿部ちゃんを連れ戻しはしません。もちろん、阿部ちゃんが協力してくれることをすごく待ち望んでいますが…後はご家族で話し合って決めてください」
こうして、俺たちの戦いは終わった。
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作者名:わかめ | 作成日時:2020年1月15日 1時