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ab side
照ってやつは、まったくなんて間の悪い男なんだろうか。
こんな時に見つかって、戻ってきてしまうなんて。
本来ならこんなに嬉しいことはないはずなのに、こんなにも喜べないなんて。
ふっかからの電話を切ってすぐ、俺はいてもたってもいられなくなって、佐久間に電話をかけた。
prrrr...
ごく短いコール音の後、電話越しでもバカみたいに通るあいつの声がする。
sk「おはようピーマンでありまぁす!」
「いや、いま夜だから。てか出るのめちゃくちゃ早ぇな」
sk 「そろそろ連絡来るんじゃないかと思ってたんだよねー。照の件でしょ?」
俺とは正反対の性格のくせに、一番俺のことをわかってるのはやっぱり佐久間だ。
sk「一応、俺の返事もまだ保留にしてある。阿部ちゃんはきっと行かないんだよね?」
「ああ、そのつもり。気を遣わせて悪いな。別に佐久間は行ってもいいんだぜ」
sk「阿部ちゃんいないとうまく行くわけないって思ったんだよ。気を遣ったとかじゃねえからあんま落ち込むなよ」
「…ありがと」
sk 「それでー?事務所の方はどうなの?」
「どんどん仕事減ってる。やっぱ俺、早くあの話受けないとダメそうだわ」
sk「そっか…」
自分では明るく返したつもりでいたけれど、佐久間の返事が途端に萎んだのを感じて、自分の隠し事の下手さに気づく。
「明日にでも実家帰ってくるわ」
これで、みんなと簡単には会えなくなるかもしれないなぁ…
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作者名:わかめ | 作成日時:2020年1月15日 1時