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『名前は永井優
元狂極の総長
これくらいしかわからないから期限は設けないわ』
「金額は」
『言い値でいい』
は?と目を見開いた九井を置いて席を立つ。
『あー、それ
他の人にも頼んである案件だから早い者勝ち
期待してるわココ』
にっこり笑って個室を後にした私を少し遅れて走って追いかけて来た九井は、なんでその呼び名を知っている。と聞いた。
『んーー
ひみつ』
今度こそじゃあねと別れ、以前と同じようにマンションでシャワーを浴びてシンイチローの隣で眠った。
次の日の夜中、入念に作戦を練って何をしたかと言うと、燃やした。
竹中のビルも家も車も別荘も全部全部。燃やした。
夜中に鳴り響き、壁のように連なって走って行く眩しく光る赤色のランプを眺めながらバイク走らせる。
竹中の家の前。
夜にも関わらず空を明るく照らす火柱が、火の粉を撒き散らして華やかに演出させていた。
野次馬も集まり、それに紛れて遠巻きに眺める。
家から出てきた放心状態の竹中を見つけて思わず口角を上げた。
女は私とそう歳の変わらない娘の肩を抱き寄せている。
放火魔は現場に戻る率が高い。と統計を出したプロファイラーは犯罪者をよくわかっていると思う。
まさに今の私だ。それを思い出して自嘲的にフッと笑う。
燃え盛る豪邸を見つめて泣き叫ぶ竹中を目に焼き付けてその場を去ろうとしたとき、ふと目が合った。
何を言っているかは聞こえないが、灰谷と口を動かす竹中に中指を立てて背を向けた。
「ご無事で」
『竹中に会ったから中指を立ててやった』
「大丈夫なのですか?」
『弱みは握ってる』
BARに戻るや否や一番に声をかけるタダにそう告げてタバコを咥えた。
その日の夜は帰らなかった。
鳴り響くサイレンを聴きながら夜を明かし、各場所で火が消えた頃にはとっくに朝になっていた。
どのニュースにもそれが取り上げられている。
犯人は未だ不明。
社長家族は消えた。
街中の大型ビジョンに映る真っ黒になった骨組みだけの家や、ビルだった物の映像を見上げて呟いた"ざまぁみろ"は。バイクのエンジン音に消えた。
「お前帰ってこねぇなら言えよ!
心配すんだろうが!」
『火事でサツも多くて動けなかったのー
ごめんねー』
「まぁ、あの場に出たら疑われる可能性もあったな」
そう言うシンイチローににっこりと笑い返した。
また罪が一つ増える。太陽からは見えない影が濃くなった気がした。
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玉兎(プロフ) - なるさん» はっ!!(*゚ロ゚)!! ありがとうございます!!✨✨ 頑張ります!!🥰 (2022年8月18日 12時) (レス) id: 2cb29c266f (このIDを非表示/違反報告)
なる - やっぱりこのシリーズとっても面白い!! これからも頑張ってください(^_^) (2022年8月18日 11時) (レス) @page25 id: 4373cfedf7 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 久遠さん» いつも楽しみにしてくださって嬉しいです!ありがとうございます(⌯˃̶᷄ ⁻̫ ˂̶᷄⌯)✨✨ (2022年5月25日 21時) (レス) id: 99723d5af6 (このIDを非表示/違反報告)
久遠(プロフ) - 蘭ちゃんに一体何が…続きが気になります✨ (2022年5月25日 15時) (レス) @page48 id: d025dfcb18 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 久遠さん» 久遠さんいつもありがとうございます! かなり増えましたね笑 (楽しくてつい書き込んでしまった…) 5も引き続きよろしくお願いしますね♡(≧ω≦ ) (2022年5月24日 20時) (レス) id: 99723d5af6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉兎 | 作成日時:2022年5月14日 14時