20回振ったあの子は灰谷姉でした

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顔の血が全部取れたのだろう。

満足したようににっこり笑ったエマにお礼を言って頭を撫でた。



未だにソファーに倒れる佐野の方へ向き直り、座って！と言うエマはきっとしっかりした女性になるだろう。



私の時とは違いゴシゴシと拭くエマに痛い痛いと叫ぶ佐野をみんなで笑う。



「そういやA
弟のヨメはどうなったんだよ」


『ヨメ？』


「ほら、海行った日に野暮用とかで」



武臣の言葉にあーーーと答えるとワカとベンケーも気になるのか体ごとこちらを向いた。


『あれ女じゃなかったわ』


「なんだ
まぁ9歳のガキにはヨメははえーか」


ハハっと笑いそう言った武臣は興味がなくなったのか、新しいタバコに火をつけた。


ワカとベンケーもエマに粗治療されている佐野を見る。



『体に墨入れに行ってただけだった』



「「「「なんて？」」」」



散々痛いと言っていた佐野まで振り向く。



「9歳のガキが？」


『背中も入ってるよ？』


マジかよ…。と引き攣る顔でタバコを咥え直した武臣。


お前何歳で入れた？俺高校。と横でやりとりしてるワカとベンケー。


シャ！と消毒液をかけられて痛みに我に返る佐野。


『ま、弟も成長したって事だよ』


にっこりと笑いながら言うと、いやいやいやいや…と聞こえた。






そのあとエマに包帯をグルグルと巻かれた佐野はパッと見ツッコミ待ちだが、この3人には見慣れた光景らしく誰も何も言わない。



「それにしてもよかったなぁ真
Aが名前で呼んでたぞ」


『は？』


武臣がニヤニヤと言う言葉に佐野は、え！！！いつ！？とソファーから転がり落ちながら武臣の胸ぐらを掴んだ。



お前が気絶してる時。と言う武臣に確かに言ってたなとワカとベンケーも便乗する。



『さて、そろそろ帰るか』


ワカ送って。と立ち上がって扉に向かう私の前に包帯男が腕を広げて立ちはだかった。



「まてまてまてまて！！もう一回呼んで！！」



呼ぶまで帰さねぇ！！と言う佐野に、別れ際のめんどくさい女かよ。と世界中のシワを集めたような深いシワを眉間に作る。


人間のこんな嫌そうな顔初めて見た。と笑うワカはバイクの鍵を持って立ち上がった。



佐野の後ろで私を見てニヤッと笑うワカにため息を一つ。



『また明日も来るから

おやすみ



シンイチロー』









「Aもう一回！！！」

「うるさい！！！」



扉を閉めてワカからヘルメットを受け取ると中からシンイチローとエマの声が響いた。





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