ふつかめ！ ページ6
クレープを食べ終わり服を探しに練り歩いていると、今度はトイザ●スのような某おもちゃ屋さんを通ると、また彼は何かを見つめている。
｢なにか欲しいものありました？｣
｢！っなんでもない｣
｢え？でも今…｣
｢何もないったら！｣
ナウシカ？とでも言いたくなるようなセリフを吐いてグイグイと私を前に押し出す彼に流されそのままおもちゃ屋さんを後にしてしまいそうになる。
｢ふんっ！｣
｢！｣
先輩に負けるまいと私も踵と膝に力を入れ全力で踏ん張る。
第三者目線から見れば人と人が支え合って人という漢字ができるんだよと言ったあの金八先生もびっくりなほど綺麗な｢人｣が出来上がっているだろう。
ハッハー！デビルハンターを舐めるなよ小僧！！
｢見て見ておかあさーん｣
｢見ちゃ行きません！！｣
という声が近くから聞こえる。どうにかしてこの均衡を崩さなくては…
一瞬力を抜きクルッと後ろを向く。
｢あっ！！｣
声を上げて前によろけた先輩をそのまま受け止め彼の手をにぎりそのままおもちゃ屋に戻った。
・
｢どれがいいですか？｣
｢………｣
｢怒ってます？｣
口をとがらせてこちらを睨んで頷いているが、身長的に上目遣いになっているため毛ほども怖くないというか寧ろくそ可愛いというか………
｢すみません。でも今日は先輩の物を買いに来たんです。｣
｢だから先輩が欲しいと思ったものはできる限り買いたいので言ってくれると嬉しいです｣
｢！！！………｣
クレープの時のようにまた大きく目を見開いて驚いていた。何故彼は自分の欲しい物を他人にねだらないのだろう。私が彼ほどの歳の頃は一人っ子だった事もあり、沢山のおもちゃを買って貰ってた記憶がある。それと比べるとやはり彼の我慢は少し行き過ぎな気がする。
ここまで我慢されると寧ろもっとなんでも買ってあげてしまいたくなる。これがたまにいる、なんでも買ってくれる親戚のおじさんの気持ちか……
｢これ…｣
そう言って彼が指指したのは野球ボールとグローブだった。
｢これですか？｣
｢うん｣
｢わかりました、ついでにバットも買っときましょう｣
｢えっ｣
ボールにグローブまで買ったらバットも買っといて損はないだろう。デンジくんとパワーちゃんの休みの日にでも皆で遊びに行こう。
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作者名：空村 | 作成日時：2021年3月16日 21時
