わんうぃーく！ (ページ35)

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わんうぃーく！ページ35

「さっき思い出したんだ」

「俺の出身は雪国で、弟と遊ぶの基本雪合戦だった。」

「投げたり、投げられたり、当てたり、当てられたり」

「今思い返せば楽しい思い出だったけどな」

先輩の目がとてもキラキラして見えた。
とっても綺麗なのに
私はとっても寂しくなった

「あの時、俺がやりたかったのは、キャッチボール、なんだよ。」

先輩がふと歩みを止めた。少し後ろで
子供みたいに俯いて拳をぎゅっと握っている。

「もっと、早く、お前みたいなやつに、会えてたらなって、思っちまった」

俯いて表情の読めない前髪から雫が落ちた。

「なんじゃ？なんじゃあ？」
「おいおい、いい大人が泣いてんのか？」

私達が後ろから着いてきてないことに気づいたのか、2人はこちらまで戻ってきて先輩が泣いてしまって居ることに気がつくと、彼の背中に寄り添うように馬鹿にしていた。だがこれが平常運転なので問題ない。

「先輩」

先輩の顔をグイッと上げる。

「私もデンジくんもパワーちゃんも、貴方が例えどんな姿で、どんな人生を歩もうが関係ないんです。」

「あなたの事が大好きだから」

驚き目を開きながらもぽろぽろとこぼれる雫にそっと口をつけた。

「は」

さっきよりさらに目を見開いた。もう開きすぎて目玉が落ちるんじゃないかというくらい開く彼にそっと背を向けて全速力で走った。

「え！？！？ちょっとAさん！？！？！！！！今のどういうことっすか！？！！？説明してください！！！！！！」

「おう？A、ウヌはあの男が好きなのかぁ？？？」

「ちょっ……と…まて！お前ら！！！」

宵闇の中、家に帰るまで全力で走り続けた。

私達はまだ穏やかな時間の中に身を任せて、その時が訪れるのを待っている。

それでもこの瞬間の私達は、紛うことなく幸せだ。