むいかめ！ ページ29
｢アキくん｣
｢私はね、1週間貴方と生活してたったの一度も貴方をワガママな子だと思った事なんかないよ。｣
｢えっ……｣
｢むしろ、アキくんが自分から私にお願い事をしてくれた時はね、とっても嬉しくなるんだ。｣
｢嬉しい…？｣
｢そうだよ。嬉しかったんだ、私は貴方が甘えてくれる程の存在になれたのかなって｣
・
『Aは…』
『どうして自分より俺のことを優先して優しくしてくれるの？』
『俺の父さんと母さんは、弟の看病しないといけないからっていつも弟を優先するんだ』
嬉しかったの。
私と目を合わせて会話してくれることが
嬉しかったの。
沢山の表情を見せてくれたことが
嬉しかったの！
たった1週間だったけど。
それでも家族になれたことが！！！！！
今まで伏せていた顔を勢いよくあげて大きく叫んだ
隣の彼はやっぱり驚いていた
貴方はいつも私が行動を起こすと驚いていたね
いつも通りだ。
これが私たちのいつも通りだ
でも
この｢いつも通り｣が｢いつも通り｣でなくなるんだね
しゃがんだまま顔だけあげている状態の私。
そして横から自分を押し付けるように私を抱きしめる人。心無しか体が薄くなりかけてる
分かっていたけれどそれでも涙は止まらない。
止まるはずがない。
｢Aが悲しんでたら、俺も悲しくなるんだ｣
なんでだろうな、と微笑むと私の背中を撫で始めた。
｢なあ｣
｢大人になった俺はどんな人になってるんだ？｣
｢教えてあげない。｣
｢えぇ！？｣
｢教えなくたって、絶対にアキくんは変わらないよ。だから不安に思わなくて大丈夫。｣
アキくんの姿が殆ど消えかけてる。
本当にお別れの時間だ。
｢元の時間に戻っても、私の事忘れないでね。｣
｢うん｣
｢デンジくんとパワーちゃんの事も忘れないでね｣
｢………………頑張る｣
クスリと笑って膝立ちでアキくんを抱きしめた、アキくんだった光の粒がかぜに飛ばされてキラキラと何処までも高く飛んでいる。
あのねアキくん。大人になった貴方はね。
今のアキくんと全然変わらない。仇の為になら自分を喜んで犠牲にして
優しいけど、怒ると怖い。酒もタバコもしてる悪い大人だけど
それでも
｢大好きだよ！！！！！｣
｢俺もっ！｣
彼の流した涙も光になっていく。
泣きながら笑ってる。
今まで見てきたアキくんの表情の中で、一番変な顔だ
｢大好きだっ｣
さようなら。
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作者名：空村 | 作成日時：2021年3月16日 21時
