いつかめ！ ページ17
｢突然呼び出しちゃってごめんねAちゃん｣
｢いえ、仕事なので問題ありません｣
｢そう｣
｢それならよかった｣
目の前にいる上司は無機質な笑顔を浮かべている。背後にある窓から指す逆光によってその笑顔はさらに感情の読みとれないものになっていた。
｢実はこの任務、できればAちゃんに受けて貰いたいな、と思ってね｣
｢私に？一体なんの任務でしょうか…｣
｢じゃあ今から説明するね。｣
机の上で組んでいた手を解き、ゆっくりと立ち上がった彼女は金の瞳で私を見下ろす。次に来る一言に私は思わず息を呑んだ。
｢時の悪魔を倒してきなさい｣
・
時の悪魔。
それは比較的新しい悪魔で、その力も能力も未だ未知数だと言われている。
しかしこの前の一件で1つ判明した事がある。
｢人の身体の時間を巻き戻す｣という事だ
どの程度まで巻き戻す事ができるかは分かっていないが、時間が戻ってしまうというのは恐ろしい事だ。
さて本題に入ろう。
私がマキマさんからアキくんを預かった日。
その日、彼女は時の悪魔はそこまで強くなかった、倒されたと言っていた。
それなのに今向かっている任務は時の悪魔の抹殺だ。
疑問と不安を抱えながら少しずつ、確実に悪魔に近づいている。
どうして先輩達が倒した悪魔がまだ生きてるの、
バディの居ない私に倒せるのかな、
姫野先輩はもう先輩の家に着いたかな、
先輩寂しくて泣いてないかな、
頭の中が沢山の言葉でぐるぐると巡っては消えていく。
今の私には風の強さも、道に並んでる可愛いお店も何も気にならなかった。
やっと腹を決めたのは指定されていた廃ビルにたどり着いた時だった。
・
階段を1歩ずつコツコツと音を立てて登っていく。
上に上がるにつれ緊張の音が体全体から聞こえてきて手にも濡れた感触がある。
滑ってはいけないと思い、服で手汗を拭い拳銃二丁を握り直す。
大丈夫。これが終わったら帰ろう。今日の夜ご飯は自分へのご褒美に寿司を食べに行こう。きっとみんな喜んでくれる。大丈夫だよ。
階段を登り終わり、屋上への扉に背中を一度預けた。
ここを開けば先輩をあの姿に変えてしまった犯人がいる。上手く行けば元に戻す方法も分かるかもしれない。
覚悟は決めた。あとはこの扉を開けるだけだ、銃のセーフティレバーを外す。扉は鍵がかかっていて開かない。
こじ開けよう。
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作者名：空村 | 作成日時：2021年3月16日 21時
