永遠【松風天馬】 ページ23
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「さよなら」
乗る予定のものより二本前の汽車が汽笛を唸らせて発車した。天馬は今生の別れのように顔を赤くし、眉を下げ涙を堪えているようだった。吐き出された四文字は強ばっている。春物のトレンチコートは出番が早かったようで薄っぺらさが仇となっていた。春は別れだ。
泣かないでよ。わざと茶化して彼の肩を叩く。あんまり泣き出しそうな顔の天馬に、ホームを行き交う誰もが私たちの別れを察していた。街で過ごした三年間が涙腺を緩ませていく。私たちは親しくなりすぎた。別れでこんな侘しい思いをしなければならないなんて。
けれど出会わなければよかったなんて思いは少しもない。それはきっと天馬も同じ。春の風が何もかもをやさしく撫で付けて笑う。私が乗るより一本前の汽車が出発の合図を轟かせて発車した。泣かない。決めていたはずなのについに天馬はひとすじ涙を流していた。
「もう、出発するの」
「まだ大丈夫だよ。次のまで時間が空いてるから」
「……元気で、怪我とか病気、とか、」
天馬はこどものようにぐずり始めていた。嗚咽を噛み殺しながら必死に私に何かを伝えようとしている。無理に快活ぶろうと、笑っている。あまりに綺麗でりりしく、私もいつの間にか涙が溢れてきてしまった。人前という体裁を忘れ鼻水をすすり新品のトレンチを握りしめた。
「天馬。ありがとう天馬。私を愛してくれて、私のことを愛してくれて、ほんとうにありがとう」
「A」
「次の街にはきっと君がいないけれど、それでも、それでも生きてみせるから……」
二人して大泣きする姿は滑稽だろうけど構わなかった。彼の胸板に顔を埋めると力強く抱き締めてくれた。ところどころが冷えている。耳元で天馬の嗚咽が聞こえる。くり色の髪が首に当たってくすぐったい。春は別れだ。春は涙だ。春は愛だ。春は、祈りだ。
そのうち天馬の冷えた指先が私の頬を包む。めかしこんだつもりの顔がひどい有り様だろうと思わず抗ったが、強引に顔を引かれキスされた。慎重で大胆で……途端に火がついたかの如く顔が熱くなる。
「ばかばか！まだ時間あるって言ってんじゃん！ もっとこうさ、別れが迫ってからにしてよ！」
「え？！ ごめん！ ダメだった？」
「そうじゃないけど、そうじゃないけどー！」
電車が来るまでどうしてろって言うの、ホームには人が居るってのに！ ああ、そうこうしている間に涙は乾いて、りんごのように赤いほっぺではにかむ天馬がそこにいる。
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ヅカ(プロフ) - 蒼依さん» 返信が遅くなってごめんなさい！ 作者です。シャボン玉みたいな短編集、、、ウレシ〜です！♡ 過去に書いた拙い話も多く載っていますが、好きになってくれてありがとうございます！ よろしければこれからもいらっしゃってくださいね(^-^)v (6月14日 22時) (
レス) @page29 id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼依 - 確かに不穏なものが多めですがそこがラヴだしあたしこういうシャボン玉みたいな短編集好き^ - ^ 金魚のはなしいいですね！！！💖 (2023年2月2日 0時) (レス) id: 210e1b584c (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - つぉいさん» 本当にありがとうございます嬉しいです泣泣 私はその言葉でまた書いていけます(; ;) これからも気が向いた時に見にきていただけたら幸いです！ 新しい話書こ〜〜〜〜〜〜〜︎（◜𖥦◝ ） (2022年10月16日 18時) (レス) id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
つぉい - 文字の、ひとつひとつに、綺麗な光が灯っていてとてもとてもうつくしいなあと思いました。ありがとうございます。 (2022年10月9日 2時) (レス) id: 4f84d41f05 (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - りんさん» やったー！！ 応援ありがとうございます(;-;) 気まぐれな更新にはなってしまうと思いますが付き合っていただければ幸いです！ コメントありがとうございましたp(^-^)q (2021年3月7日 23時) (レス) id: c875d84994 (このIDを非表示/違反報告)
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