偏食家に大火傷を【瞬木隼人】 ページ20
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ぎしり。
人間ふたりを乗せたベッドのスプリングが嫌な軋みを鳴らしたのを背中で感じ取った。うすやみが漂う部屋のなか、瞬木の顔だけが独特の艶をまとって見える。空気が熱をこめて、汗を吸ったユニフォームは心なし体に張りついて不快だ。
何も言わない瞬木。悲しんでいるのか、怒っているのか、私をベッドに組み敷いて見つめ続けている。私は目を逸らすこともできず、掴まれた手首と上に乗っかかる体重に硬直するばかりだった。逃げられない。私たちは付き合っていない。そんな私の困惑したり怯えたりする顔が愉快だったのか瞬木は乾いた笑いをこぼした。
「俺、Aさんのこと嫌いだよ」
扉いちまいを隔てて廊下からキャプテンたちの声が聞こえる。晩ごはんはなんだろうね。そんなのんきな声が健全の権化のようにとおく響いていて、正常な思考が途切れていく脳で私も同じことを思う。熱のこもった衣服のせいか食欲は湧かない。
緊迫はボルテージを増していく。身じろぎで服の繊維が擦れるだけで体の芯がぞわぞわとして止まらない。試合中には考えたことも無かったのに、焼けた肌とか筋肉質な体つきとか、いま身体の自由を奪う大きくてかくばった手とか、等身大の異性を目の当たりにして蛇に睨まれた蛙が如くに動けなかった。
彼の言葉に何も言えないまま、目に涙がたまっていくのを感じて細い息をもらす。瞬木は顔を近づけて自嘲ぎみに笑った。眼前にせまる彼のうつくしい顔だちと、熱気こもる空気と、二人の汗のにおい。手首を握る力が強くなって、きりきり爪をたてられてる。
「い、いた、いたい、またたぎ……！」
「簡単にやさしくするからこうなるんだ」
涙つたう頬があたたかい。抵抗は意味をなさない。それでも瞬木は先にまで手出しをしなかった。怒ったような顔でまっすぐに目を合わせるばかりだった。震える身体でついにおののきから目を逸らしてしまって縮こまる。彼の爪が私の肉へと食い込み痕を残していく。
「俺のものにならないなら消えちまえ」
わたしはそこで瞬木が泣いていることに気がついてしまって、震えも怯えも彼のものだったのだと気がついてしまって、うつくしくもがく少年を抱きとめるなりの欲望を抱いていたにも関わらず、この四肢は彼が縫い付けて不自由にしているのであった。
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ヅカ(プロフ) - 蒼依さん» 返信が遅くなってごめんなさい！ 作者です。シャボン玉みたいな短編集、、、ウレシ〜です！♡ 過去に書いた拙い話も多く載っていますが、好きになってくれてありがとうございます！ よろしければこれからもいらっしゃってくださいね(^-^)v (6月14日 22時) (
レス) @page29 id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼依 - 確かに不穏なものが多めですがそこがラヴだしあたしこういうシャボン玉みたいな短編集好き^ - ^ 金魚のはなしいいですね！！！💖 (2023年2月2日 0時) (レス) id: 210e1b584c (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - つぉいさん» 本当にありがとうございます嬉しいです泣泣 私はその言葉でまた書いていけます(; ;) これからも気が向いた時に見にきていただけたら幸いです！ 新しい話書こ〜〜〜〜〜〜〜︎（◜𖥦◝ ） (2022年10月16日 18時) (レス) id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
つぉい - 文字の、ひとつひとつに、綺麗な光が灯っていてとてもとてもうつくしいなあと思いました。ありがとうございます。 (2022年10月9日 2時) (レス) id: 4f84d41f05 (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - りんさん» やったー！！ 応援ありがとうございます(;-;) 気まぐれな更新にはなってしまうと思いますが付き合っていただければ幸いです！ コメントありがとうございましたp(^-^)q (2021年3月7日 23時) (レス) id: c875d84994 (このIDを非表示/違反報告)
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