消せない炎【狩屋マサキ】 ページ19
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「本当に今夜出るの？」
「電車の都合とかがあるから」
冬の尾を引くようなうすら寒い風が二人の間を吹き抜けていく。とくにこんな夜は冷えているからAもマサキも春にしては少し厚着だ。月明かりが頬を青白に色づけていた。
「わざわざ着いてこなくてもいいのに。女が一人で出歩く時間でもないんだし、帰りどうすんの」
「マサキを送ったらそのままホームでヒロトさんたちを待つよ。あの人酔うと手がつけらんないんだもの」
たとえリュウジさんが一緒でもヒロトさんをうまいこと連れて帰るのは困難でしょ。同窓会だからって際限無く飲むんだから。Aは自分の言った""同窓会"という言葉にひどくひっかかった。今隣を歩く彼が将来同窓会に来るか分からなかったし、来るとは思えなかったのだ。
マサキは高校を卒業しておひさま園を発ち大学の寮に住む。稲妻町からは離れていて気軽に会いにいけるほどの距離ではない。物理的な距離の話をしている訳ではないがきっとマサキはもうこの街に戻って来ない。Aにはなんとなく分かった。
「寂しくなるね」
「抱いてあげよっか」
「うわ、サイテー！」
夜道に笑い声が短く響く。おひさま園の人間は基本的に孤児だ。マサキは人一倍人にされたことを覚えているし人にしたこともよく覚えている。ここにはそんな彼の恨みや嘆きが残されているから、それが掘り返されて眼前に突きつけられるたびマサキは心を引っ掻きまわしながら泣き腫らすのだろう。だから彼は二度として目の前には現れない。
「マサキ」
「なに」
いつしか二人は自然と手を繋いでいた。本当は誰よりも寂しがりで愛されたいはずなのにマサキは感情を隠すのが上手い。暗がりの部屋でひとりめそめそと泣くマサキを見てAは心がちぎれるほど切なくなったことがある。マサキは孤独を嫌うあまり、より孤独の深みへはまっていく。
だからマサキは同窓会にもこない。マサキは過去を捨て続ける。口先ばかりを言いながら一度だってここに戻るつもりはないのだろう。マサキは孤独だ。マサキは孤独のこどもだ。街灯に照らされた横顔が寂しいと叫んでいる。繋がれた手が二人を熱くさせた。夜は深く濃くなっていく。Aの目に三日月が映る。
「愛されたかったね」
マサキは少しの間だけ無言だったが、やがて鼻をすすりながらうんと吐き捨てた。
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ヅカ(プロフ) - 蒼依さん» 返信が遅くなってごめんなさい！ 作者です。シャボン玉みたいな短編集、、、ウレシ〜です！♡ 過去に書いた拙い話も多く載っていますが、好きになってくれてありがとうございます！ よろしければこれからもいらっしゃってくださいね(^-^)v (6月14日 22時) (
レス) @page29 id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼依 - 確かに不穏なものが多めですがそこがラヴだしあたしこういうシャボン玉みたいな短編集好き^ - ^ 金魚のはなしいいですね！！！💖 (2023年2月2日 0時) (レス) id: 210e1b584c (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - つぉいさん» 本当にありがとうございます嬉しいです泣泣 私はその言葉でまた書いていけます(; ;) これからも気が向いた時に見にきていただけたら幸いです！ 新しい話書こ〜〜〜〜〜〜〜︎（◜𖥦◝ ） (2022年10月16日 18時) (レス) id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
つぉい - 文字の、ひとつひとつに、綺麗な光が灯っていてとてもとてもうつくしいなあと思いました。ありがとうございます。 (2022年10月9日 2時) (レス) id: 4f84d41f05 (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - りんさん» やったー！！ 応援ありがとうございます(;-;) 気まぐれな更新にはなってしまうと思いますが付き合っていただければ幸いです！ コメントありがとうございましたp(^-^)q (2021年3月7日 23時) (レス) id: c875d84994 (このIDを非表示/違反報告)
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