ステラ【和泉奏秋】 ページ12
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奏秋はなにかに執着するのをひどく嫌がった。それは奏秋の愛でもあった。
「かなあき」
Aが泣いている。真面目で、はにかみやで、気立ての良いAがめそめそと弱音を吐いている。かなあき。その言葉はなにより重くうつくしくひとけのない廊下にこぼれ落ちていった。奏秋は首で振り向いた。奏秋の後ろ姿はしなやかで芸術的なフォルムをしている。形の整った横顔はまことにみやびであった。
なにかあったのか。奏秋の言葉にAはめそめそするばかり。奏秋は女でないから女の気持ちはよく分からなかった。
「かなあき。ごめんなさい奏秋。私は貴方が思ってるいるよりずっとあなたに会いたい。あなたに、どうしてかあなたに……」
「どうして」
「貴方が欲しい。ほんとうは貴方を縛りたくないよ。貴方を傷つけたくない。でも、もう、もはや！」
それだけじゃ、駄目なんだよ……。Aは嗚咽をもらしてその場に座りこんだ。立っていられなくなったから。Aが隠していたつもりの劣情が、こころの中を蝕んで暴れだす。醜い姿の彼女を誰も救えない。苦しそうに息を吸っている。Aに自己嫌悪の悪魔が住み着いていた。
奏秋は執着が嫌いだ。人に執着することが出来ない。だからAにも執着しない。サッカーを嗜んだのも、本当は能の稽古にどっぷり浸かってしまうのが怖かったからだ。執着は奏秋を薄暗いところへ連れ込んでいく。執着は奏秋を孤独に追いやっていく。執着は奏秋を人知れず悪魔にしていく。
「もう、ひとりになりたくないよ。もう惨めな気持ちになりたくないよ。悲しい。私はものすごく、悲しい……」
Aは一人ではないし、惨めでもない。そんなの誰だって知ってるのに。奏秋はようやく体ごと振り向いた。泣きすぎてむせる彼女に奏秋はどんな言葉をかければ良いか分からなかった。奏秋は中学生だった。でもきっと、大人になっても分からない。Aの悲しみが廊下に染み渡っていく。
奏秋は執着が嫌いだった。しかし奏秋の胸のうちで、執着とは別の何かが静かに暴れだした。本当に一人で誰よりも惨めだったのは俺の方だ。だからA……
「俺を許さないでくれ」
いつか、君に優しい声をかけてやれる人間になりたい。
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ヅカ(プロフ) - 蒼依さん» 返信が遅くなってごめんなさい！ 作者です。シャボン玉みたいな短編集、、、ウレシ〜です！♡ 過去に書いた拙い話も多く載っていますが、好きになってくれてありがとうございます！ よろしければこれからもいらっしゃってくださいね(^-^)v (6月14日 22時) (
レス) @page29 id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
蒼依 - 確かに不穏なものが多めですがそこがラヴだしあたしこういうシャボン玉みたいな短編集好き^ - ^ 金魚のはなしいいですね！！！💖 (2023年2月2日 0時) (レス) id: 210e1b584c (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - つぉいさん» 本当にありがとうございます嬉しいです泣泣 私はその言葉でまた書いていけます(; ;) これからも気が向いた時に見にきていただけたら幸いです！ 新しい話書こ〜〜〜〜〜〜〜︎（◜𖥦◝ ） (2022年10月16日 18時) (レス) id: 841dbd16f5 (このIDを非表示/違反報告)
つぉい - 文字の、ひとつひとつに、綺麗な光が灯っていてとてもとてもうつくしいなあと思いました。ありがとうございます。 (2022年10月9日 2時) (レス) id: 4f84d41f05 (このIDを非表示/違反報告)
ヅカ(プロフ) - りんさん» やったー！！ 応援ありがとうございます(;-;) 気まぐれな更新にはなってしまうと思いますが付き合っていただければ幸いです！ コメントありがとうございましたp(^-^)q (2021年3月7日 23時) (レス) id: c875d84994 (このIDを非表示/違反報告)
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