椛とカメラと君と - 紫 ページ47
紅く染まった椛の下。
思わず下ろしたシャッターの中。
君に恋をしました。
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
半年ほど前。ふと思い立って一人旅 in 京都。
ちょうど桜も散り、葉桜がつき始めた頃。
一眼レフ片手に財布と携帯だけもって行き先もなく出発。
どこに行きたいとか、何かしたいとか、ノープラン。
この俺の気ままに名をつけるなら傷心旅行。
ずっと可愛いなって思っていた同僚の子がたまたま彼氏と一緒に歩いているのを見つけた。
ただそれだけ、だけど。
カメラを持って辿り着いたのはひとつの神社。
ピンクから緑に変わる木々の間に見つけた。
「綺麗」
思わず漏れたのはたった一言。
自分でも気づかないうちにカメラを握りしめ、シャッターを下ろしていた。
あれから今日まで、現像した写真を手に彼を探し続けていた。
今日も収穫はなしと思い、来た道を戻っていると見つけた。
紅く染まった椛の下。
あの日と同じように知らぬ間にシャッターがなっていた。
あの日と同じ栗色の柔らかい髪の毛をたなびかせ、寒さのせいで赤くなった鼻を気にしている。
そんなありふれた行為が様になっていて、自分の脳内で創り出した幻かと思った。
「寒いし、帰ろかな」
たまたま、小さな声で聞こえた言葉。
２回見たことあるだけの、名前も知らない君から初めて聞こえた声。
「あの、これ使いますか？」
持っていていた使い捨てカイロを手に声をかけた。
否、かけていた。
シャッター越しの君に。
ｅｎｄ．
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菻(プロフ) - つきみさん» ありがとうございます。そう言っていただけてありがたいです！期待に逸れるよう書かせてもらいます！ (2018年11月10日 15時) (
レス) id: 35348df3b1 (このIDを非表示/違反報告)
つきみ - 初めまして。 お話読ませていただきました！ 愛されている黄さんすごく可愛くて素敵でした。ハロウィンの続き、楽しみにしています。 (2018年11月9日 22時) (レス) id: 90baa9fa42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菻 | 作成日時：2018年7月10日 18時
