11話…【side-S】 ページ11
.
足腰の立たない重い身体を引き摺って、壁伝いにリビングに行くと、ソファの上に毛布の山ができていた。
頭だけ出してまあるくなって眠っている。
目の縁が赤い。
色白だからか擦るとすぐに赤くなるくせに、泣き虫ときてるんだから手に負えない。
ずるずると床を這いつくばって近くまで行くと、ゆっくりと赤くなってしまった白い肌を指でなぞった。
いつもは寝起きが悪くてこのくらいじゃ起きることはないのに、触れた瞬間、急に身体が起きたから驚いて触れた指を引いたけど、それを掴まれて引き寄せられる。
「しょおくん…」
視線が合うと、見る見るうちに大きな瞳に涙が盛り上がった。
「ちょ、泣くなよ！」
「だって…」
「30も過ぎた男がだってとか言うな。」
ポロポロと涙をこぼしながら抱きしめられて、仕方なく背中をポンポンとやんわり叩くと、抱きしめる腕に力がこもる。
「やだ…絶対別れない。」
まだ言うか、こいつは。
「俺も、別れるつもりなんてないって。」
俺の言葉にガバッと顔を起こして、まじまじと顔を見てきた。
おい、なんつー顔してんだ。
こうやって見ると出会ったころとそんなに変わってないな、と思う。
「…しょお、くん？ほんとに？」
およそ30代男性の口調じゃない。
なんだよ、甘えたに戻っちまったのか？
「言葉が足りなくて悪かったよ。」
少し寝癖のついた髪を撫でてやると、またギュッと抱きしめられた。
身体に回った腕が震えてる。
「ホントに別れるとか考えてねーから。」
「じゃあ、なんで？」
首筋に顔を埋めて、また泣き出した。
おいマジで涙腺どーなってんだ。
「あの、さ。お前んち客多いしさ、いつか友達とバッタリなんてことあるかもしんねーじゃん？それに俺はお前がいなかったら多分この部屋に来ねーし。」
「なんで？自分ちみたいに来てくれてもいいじゃん。」
「俺はね、お前にはちゃんと自分の居所ってものを持って欲しいと思ってる。おら、顔上げろって。いつまでも泣いてんな！」
無理に顔を上げさせると、セクシーなんて言葉が程遠いような幼い顔。
「俺はいつも貴方といたい。」
涙を拭いてやると、伏せられた長い睫毛が震えた。
「現実問題の話をしてる。でも精神的には俺もそうだよ。」
「現実…。」
あぁ、見つめてくる大きな瞳が黒曜石みたいで綺麗だな。
こんな瞳で見詰められたら誰だって惚れる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 173人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ロッシュ(プロフ) - みやびさん» はじめまして。コメントありがとうございます。これからも気に入っていただけるようなお話を書きたいと思います(o^^o)よろしくお願いします☆ (2017年7月10日 21時) (
レス) id: 205fd6a8bf (このIDを非表示/違反報告)
ロッシュ(プロフ) - ゆーなさん» コメントありがとうございます(o^^o) お兄ちゃんな翔さんと弟な潤くんの関係性が実は大好きです☆ワクワク学校も可愛かったですね〜♪ (2017年7月10日 21時) (レス) id: 205fd6a8bf (このIDを非表示/違反報告)
ロッシュ(プロフ) - よむママさん» はじめまして。コメントありがとうございます☆ リアル感を大事にしているのでホントに嬉しいです(*^^*) これからもよろしくお願いします♪ (2017年7月10日 20時) (レス) id: 205fd6a8bf (このIDを非表示/違反報告)
ロッシュ(プロフ) - あかしさん» あかしさん、こんにちは(*^^*) 合鍵、自分でも気に入っていたので、気に入っていただけて嬉しいです☆必死な潤くんが可愛くて、こうだといいなぁ…なんて思ってました〜。 (2017年7月10日 20時) (レス) id: 205fd6a8bf (このIDを非表示/違反報告)
みやび(プロフ) - 初めまして。こういう翔潤大好きなんです！これからこんな翔潤またまた読めたらなって勝手に思ってます笑 (2017年7月5日 22時) (レス) id: f81e0c7a5e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ロッシュ
| 作成日時：2017年6月28日 0時
