19話 ページ19
「あの！Aさん」
「うん。何？」
くるりと此方を振り返るとたなびく髪が綺麗だ。暗くなった山の中ではよく見えないけれど、黒く塗れた瞳もきっといつものように美しい。
「なにしてたん…Aさんは…こんなところで。ア、その、おれたちあんさんのクラスメイトで……」
天乃がごにょごにょまくしたてると、Aさんは不思議そうに首をひねった。
「何してたんだろう」
「え？」
「だから、何してたんだろうって。私。今まで」
ぽかんとする天乃をほうって、Aさんは顎に手をあてて真面目に悩んでいる。
そして数瞬後、ぱんと手を叩いた。
「神社にいたんだ」
「神社って、」
「うん。この先の徒矢神社だよ」
行ってみる？と歩き出して、Aさんはさっきのところまで戻ると看板をなんの躊躇いもなく横へ退けた。振り返って、言う。
「この先に神様がいるんだ。ほんとうは秘密だけど、気になるなら来ていいよ」
天乃は思わずポケットのなかを探った。あたりめの空き袋がくしゃりと音を立てる。
時計は忘れてきたけれどもう空は暗い。禁止された裏山に入った挙句門限はもちろん過ぎていて、さっき山道で転んだからTシャツには土がこびりついている。説教を免れるのは不可能だろう。
今すぐ帰って謝り倒して、温かいご飯を食べて寝たい。けれどこちらへ手を差し伸べるAの妖しげな誘惑は、彼女にホの字な天乃には耐え難い。
「…行くで、ゾム」
鬼が出るか蛇が出るか。天乃は暗くしめった山の地面を汚れたスニーカーで踏みしめる。月明かりに照らされて一瞬見えたAさんの瞳は、不自然に濁っていた。
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桜華(プロフ) - こんにちは！初コメント失礼致します！神様モチーフの素敵な作品、これからどんなことが待っているのかワクワクが止まりません！無理のないよう、更新頑張ってください！青,い,鳥の方、フォロリク失礼致します。 (2022年7月3日 15時) (
レス) @page8 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaniska | 作成日時：2022年7月1日 17時
