16話 ページ16
「Aってさ」
「なに。ショッピ」
Aはななめうえを見あげて応えた。たぶん、そろそろ七月も半ばを過ぎたころ。快晴の日が続いていて、でも山の上は湿気が多くて涼しい。まだショッピはAの神様のままだ。
「自分が人に好かれるタイプやと思う？」
「……、思わない」
Aは質問の意図を掴みあぐねて戸惑いつつ言った。この町にきたのは大分幼いころだし、もはやここが地元と言っても過言ではないほどだけれど、友人はひとりもいない。自分がとっつきにくい性格であることも、周りから浮いていることもAはわかっていた。
そして、だからこそこんなふうに今、神様に縋っている。
「ふうん」
ショッピは面白がるような笑みをくちもとにだけ浮かべていた。目は木の影になっていてよくみえない。
何かを思い出すように、親指の爪をひとさし指の爪でぱちんぱちんと弾いている。神様はずいぶん爪が長くて、小指の爪だけ、きれいな朱色に塗られている。
「クラスメイトの名前とかって覚えとる？」
「……、…あんまり」
「──鳥井希、天乃呂戊太」
「だれ？」
そんな名前、聞いたこともなかった。Aは素直に即答する。
「そっかあ、そっかあ」
ショッピはさらに笑みを濃くした。
また爪をぱちぱち鳴らして、「可哀想に、じゃあ要らないやんなあ」と山の麓のあたり＿＿町の南の方を見下ろした。なにか、あるのだろうか。神様にしか見えないもの。
「近々A、知り合いに会えるかもしれんよ」
「知り合い？」
「そ。ま、心配せんでも、Aは俺のもん＿＿ん、えと、俺が守るんで」
「……そう？」
なんだかいまいちぴんとこなかったけれど、Aはおれのもの、だなんて神様に言われるのは嫌な気分ではない。にしてもよりによってわたしのような女を守るだなんて、わたしの神様は変な人だ。
「あーあ、んふ、ほんまに、Aが“まだ”かどうかも知らんとか、憐れ」
「？」
「んは、なんでもないで」
ショッピはあしを交互にぱたぱた動かして、珍しく無邪気な笑みを浮かべながらくふくふ喉をならした。
Aの初めてなんてとうに散らされているのに、なんて可哀想な人間。
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桜華(プロフ) - こんにちは！初コメント失礼致します！神様モチーフの素敵な作品、これからどんなことが待っているのかワクワクが止まりません！無理のないよう、更新頑張ってください！青,い,鳥の方、フォロリク失礼致します。 (2022年7月3日 15時) (
レス) @page8 id: 1bda5ccdb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaniska | 作成日時：2022年7月1日 17時
