その花火、恋の色/FB777 ページ2
どん、どん。
耳を聾する音と、カラフルな光の中。
何を言われたのか分からず大きめの声で聞き返せば、彼は困ったように笑う。
それから、何でもないとでも言うように私の手を引いて歩き出した。
どこかぎこちないその態度。
ちらりと見える耳が赤いことに、屋台の灯りで気が付く。
ああ、もしかして。
何となく、彼が言おうとしてたことが分かった気がした。
＊
あの時と同じだ。
繋がれた手を見つめながら、ぼんやりと考えた。
1年前と同じ花火大会で、1年前と同じメンバーで集まって、1年前と同じように彼に手を引かれて抜け出して。
会場から少し離れたところまで来ると人もまばらだった。
さっきまでの喧騒が嘘のようで、少し寂しいような気もする。
『静かだね、FB』
「流石にね。ていうか、じゃないと困る！」
場所とFBの両方の意味で私は言ったのだけど、彼は前者でとったらしい。
まあ、それでもいいけど。
私達は並んでガードレールに腰を下ろした。
手はまだ繋いだままだった。
不意に彼が何かを決意したかのように勢いよくこちらに振り向く。
思わず驚いてそちらを見れば、予想以上に顔の距離が近くてどうしていいか分からなくなってしまった。
「…A」
名前を呼ばれただけで、心臓が騒ぎ出す。
私を撃ち抜く真剣な眼差し。
これも、1年前と同じ。
「あの、さ！俺っ…好きなんだ、Aのこと」
時が、止まった気がした。
いや、" 戻った " の間違いかもしれない。
1つ違うのは、ちゃんと君の声が聞こえること。
『…あの時からずっと、待ってたんだから』
「えっ？あの時って、」
『去年。私、気づいてたよ』
「嘘ぉ！」
彼は恥ずかしそうに片手で顔を覆って、何それ恥ずかしい、と俯いてしまった。
恥ずかしいのはこっちも同じだって。
少し体を傾けるとすぐに肩が触れ合う。
するとFBがぎこちなく繋いだ手を引き寄せて、私が寄りかかるような体勢になった。
それが何となく心地よくて体を預ければ、彼は小さく笑って。
そしてすぐ、まるで私を急かすように炸裂音がして、夜空に花火が打ち上がる。
『FB、私も好きだよ』
どうしたら聞こえるか考えた結果耳元で伝えれば、ちゃんと聞こえたようで。
去年と違って嬉しそうに笑う彼の顔。
「花火に祝福されてるみたいじゃん！すげぇ！」
ロマンチストなのか厨二病なのか分からないけど笑顔ならそれでいいや、なんて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃京 | 作成日時：2016年2月25日 0時
