**** ページ5
いつも通り耳たぶに傷を付け、
血を啜りだす。
あの感覚に体中が支配され、
口に手を当てて必死に堪えた。
しばらく血を啜っていた唇は、
一つの吐息と共に離れる。
その吐息が耳にかかって、ほんの少しだけ肩を竦めた。
斎藤「あまり、可愛い反応をするな」
A「そ、そんな事を言われてもっ!」
衝動が治まり、座ったまま、
斎藤さんはもう一度私の体を抱きしめる。
それに応えるように斎藤さんの背中に腕を回せば、
耳元でフッと笑った声が聞こえた。
何故、笑うんだろう?
笑うような事、あったかな?
A「何故、笑うんですか?」
斎藤「やっとか、と思っただけだ」
A「……そういえば、いつからですか?」
斎藤「何がだ」
A「あの、その…、
私の事を、す、好きだって…」
斎藤「あんたが変若水を作った時だ。
その時、俺はあんたに惚れていると、気が付いた」
そ、そんな前から?!
数年前ですよ?!
全然気付かなかったな…。
斎藤さんは普段から表情に出ない人だから、
気付けるはずもないか。
いや、姉様が言ってた。
私は疎いんだと。
疎すぎて気付かなかった。
そっちの方がしっくり来るかも。
斎藤「……あんたから、何も聞いていないのだが?」
私が驚いていると、
急に降りかかる少し不機嫌な声。
何を?
言ってない事って、何だ?
何か隠してたっけな?
捻るようにその言葉の答えを探していると、
また耳元で斎藤さんは笑う。
斎藤「本当に、あんたは疎いんだな」
A「……分からないものは、分かりません」
斎藤「俺は、はっきりと伝えたはずだが?」
伝えた?
……ああ、そういう事か。
質問攻めしかしていない事に気付き、
少しだけ笑ってから口を開く。
A「私は、斎藤さんの事が好きです。
ずっと、お慕いしておりました」
今は戦の最中。
なのに、こんなに幸せでいいんだろうか。
夜が明ければまた、
私たちは戦いに身を投じなければならない。
いくら鬼の体でも、
当たり所が悪ければ死んでしまう。
それなら今だけは、この幸せを噛みしめよう。
いつ、この瞬間が無くなってしまっても、
悲しまずに済むように…。
52人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
斎藤ようこちゃん(プロフ) - 何度も読み返して読んでます。斎藤さんとの恋仲で幸せです。涙が流れてます。 (2020年5月26日 21時) (レス) id: e53507092f (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - 朔さん» コメント&一気読みありがとうございます!風間の言葉遣いがなかなかに難しく、上手く表現出来ているのか不安でしたが、可愛いと言ってもらえてうれしいです♪なかなかに私の妄想が激しいものになってしまいますが、これからもよろしくお願いします(*´ω`*) (2019年10月4日 9時) (レス) id: 92dfc97012 (このIDを非表示/違反報告)
朔(プロフ) - コメン失礼します!今日この作品を見つけて一気読みしてしまいました!!悲劇が無くて風間がかわいくて()大好きです!!!最近は薄桜鬼の小説を書いてる方も少ないので...(>_<)応援しています(^^ゞがんばってください!!長文失礼いたしましたm(__)m (2019年10月4日 2時) (レス) id: af48bb8f49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まほろ | 作成日時:2019年10月2日 16時