【薄桜鬼】純血を巡る者６ (ページ7)

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１０５：簪の約束ページ7

甲府から江戸へ辿り着いた私たちは、
旗本屋敷の屯所へと戻ってきた。

原田さんや永倉さんも、
私たちが到着した二日後には無事に戻ってきてくれて、
私と姉様は、まるで子供のように泣いて喜んだ。

だけど、戻ってきてから
土方さんと近藤さんの姿は一度か二度見ただけで、
二人は屯所へ戻って来れない程
忙しくなっている。

A「山崎さん。これからお仕事ですか？」

山崎「ああ。薩長の動きを偵察しなければ、
今後、どのような動きをしてくるか分からないからな。
今は局長も副長もお忙しい。
自分たちに出来る事はやっておかないとな」

A「……そうですよね。お気を付けて」

山崎「君も。
何処で狙われているか分からないんだから、
あまり気を抜かないようにしてくれ」

A「はい。ありがとうございます」

山崎さんと島田さんの監察方二人は、
甲府での出来事を江戸に戻ってから知り、
それ以来、かなり私の事を着に掛けてくださっている。

今まではそんなに姿を見る事は無かったのに、
最近では一日に二、三回は姿を見るようになっていた。

山崎さんを見送ってから、
晴れ渡った空を縁側に座って見上げていた。

雪村綱道の事を考えると、
今でも怒りに震えそうになってしまう。

だけど、怒りに感情を支配されてしまっていては、
もしもの時に冷静な判断が出来ない。

だから頻繁に空を見上げるようにしてるんだ。

原田「まぁた、空を見てんのか？」

A「……空はいいですよ。
見ていると落ち着きます」

原田「落ち着く、か………。
なあ、俺と出掛けねえか？気分転換だと思ってさ」

A「……？いいですよ。
たまには外に出た方がいいですしね」

原田さんの表情はいつもと変わらない穏やかな笑顔なのに、
何処か影を纏っているような気がして、
笑顔で原田さんの誘いを了承した。

江戸の町に繰り出した私たちは、
ただ歩くだけの散歩をしてみたり、
甘味処へ立ち寄ってみたりと、
本当にただのお出掛けを楽しんでいる。

まるで京にいた時のような錯覚に陥ってしまうほど、
穏やかなお出掛けになっていた。