１１４：綱道と新政府軍 ページ26
それからは特に話をする事もなく、
ただ小さく開けた場所から
景色を見ていた。
すると、何処からか複数人の足音が聞こえる。
私と斎藤さんは近くの茂みに隠れ、様子を窺う。
ザッザッと
草を踏みしめる音が近くに聞こえて息をひそめた。
少しだけ頭を動かし、
その足音の主たちへ目線を送ると、私たちは驚いた。
そこを歩いていたのは、
甲府で見た異様な羅刹たちだったのだ。
A「何故、こんな所に…」
斎藤「あの最後尾…、綱道さんではないか？」
異様な羅刹の最後尾へ目線を向けると、
そこには坊主頭の綱道の姿が見て取れる。
私の中で異常なまでの憎悪が湧き上がり、
無意識に手は刀の柄を握っていた。
だけど、その手を斎藤さんに押さえられる。
斎藤「ここでの戦いは不利だ。今は抑えろ」
A「………はい」
羅刹たちが通り過ぎるのを待った。
野営地の方へ向かえば戦うしかない。
あそこには羅刹の事を知らない隊士さんたちがいるのだから…。
そう決めていたのだが、
幸い羅刹たちは道のない山の中へと消えていく。
あんな所を進むなんて、
何処へ行くのだろうか…。
羅刹の行方を見ていると、
隣にいた斎藤さんが小さく呟いた。
その人物の名前に驚き、
思わずそちらを見てしまう。
斎藤「山南、さん…」
A「え…？」
綱道の少し後ろから山南さんが、
まるで綱道を尾行するように歩いていた。
闇に隠れ、人目を忍んで…。
それは本当に尾行なのか。
もしかして、
綱道と共に行動しているのではないか…。
それは私たちには分からなかったけど、
その後をつけなければいけないような気がして、
私たちは静かに茂みから体を出した。
静かに、なるべく音を立てないように。
山南さんの尾行を始めた。
しばらく山南さんを追っていたのだけれど、
どうやら山南さんは寝返ったのではなく、
綱道の尾行をしている様子だと分かり、
意を決して山南さんへ声を掛ける。
斎藤「総長」
山南「っ…！驚きました。
君たち、ここで何を？」
A「山南さんこそ、
何をしていらっしゃるのですか？」
山南さんによれば、山南さんと平助君は、
半月前ほどに会津へ来たのだが、その時、
偶然にも綱道が羅刹隊を率いて歩いている所を見つけ、
それ以来、内偵を続けているらしかった。
山南「それにしても、あの羅刹は何なのですか？
藤堂君から聞いてはいましたが、
直接見るまでは信じられませんでした…」
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斎藤ようこちゃん(プロフ) - 素敵だよ。涙が流れます (2020年5月24日 23時) (
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作者名：まほろ | 作成日時：2019年9月26日 17時
